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(イ) 新たな行政統制の要請

フランスにおいても各国と同様に公共サービスの拡大・複雑化に伴い、裁判的統制という事後救済だけでは人権保障は達成されないと言う見地から、行政機関の事案処理の効率性のみならず、公正さ、民主性、公開性、透明性の確保が要請されるようになってきていた。特に、1950年代に至って、行政作用の相手方その他利害関係人の権利・利益を公権力の違法な侵害からいかにして擁護するかという問題意識を持って、フランス行政法学の現代的課題として行政手続論が展開され、また1960年代に至ると個人の自由を擁護するため、また、行政の権利濫用から市民を擁護するためよりよい機構づくりを目指す活動としてフランスにおけるオンブズマン制度を創設する動きが高まっていった。

こうした現代的な行政統制の制度化は、1973年の「メディアトュールの設置に関する1973年1月3日の法律第6号(以下、メディアトュール法という)」、1978年には行政文書アクセス権に関する法律、翌1979年には行政行為の理由表示についての法律が制定され、1983年にはデクレ(decre)の形式ではあるが行政手続の法典化が行われるようになって

きた。

 

(ウ) メディアトュール法の成立経緯

フランスでは、オンブズマンに該当するこのメディアトュールを成立させるのに初代のメディアトュールに選ばれたアントワーヌ・ピネー(Antoine Pinay)の提案から国民議会で成立し、公布されるまで約10年の年月を要している。

このメディアトュール法成立に当たっては、コンセイユ・デタの大多数が導入に反対し、この制度に変わる制度の導入(たとえば国民と行政の関係を改善する国務大臣の任命、1971年には企業と行政の関係の簡素化を研究する委員会の設置、1972年には政令で行政裁判所の管轄に関する係争解決の規定を改善など)で阻止しようとしていたし、議員の中にもメディアトュールの役割こそ議員の任務であるとして反対も多かった。

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