日本財団 図書館


設置し、各種証明書の自動発行によるサービスを提供している。このサービスは、日本における住民票の写し等の自動発行システムと類似しており、本人識別のためのカードを利用して、本人及びその家族の証明書(住民登録証明、家族証明、出生証明など)の発行サービスを提供するものである。この本人識別のために用いられているものが納税者識別カードである。その端末は空港内や市内の各種展示場など、公共施設外にも設置されている。

?A本人識別のためのカード利用

市民は日常生活において、公的なサービスを受けるに当たって本人識別用に通常2枚のカードを利用している。その上枚はローマ市が発行している市民カードで、もう1枚は国が発行している納税者識別カードである。この納税者識別カードには納税者コード(Codice Fiscale)が記録されている。どちらも磁気カードであり、エンボスが刻印され、磁気ストライプが付いた一般的なカード仕様となっている。

市民カードは15歳から交付され、パスポートの替わりとしてヨーロッパ内で使用することができる。市民カードはいわば身分証明書としての役割が大きく、銀行での小切手を現金に換金する際などに利用されている。市民カードが身分証明書の替わりに使用されるのは、本人の顔写真が貼付されているためでり、カードを所持しているだけで本人識別が容易であるためである。一方、納税者識別カードには本人の顔写真の貼付がなく、納税者識別カードは各種手続きにおける本人のサイン(署名)の替わりとして機能している。

納税者識別カードは出生時に付番され、国税庁によって一元管理されている。ローマ市が発行する各種証明書の交付を受ける際には納税者識別カードが必要となる。また、各種証明書にはこの納税者コードが出力されている。

このような行政サービスのためのカードを発行しているが、住民の転出、転入における自治体間の情報交換は、日本と同様に紙の文書で行われている。例えば、ローマ市民が他都市に転出した場合は、その者が転出先の自治体に転入の届け出をし、転出先の自治体はその届け出の事実確認をした後に転出元の自治体(この場合、ローマ市)に紙の文書でその事実を伝達する。これはローマ市に限ったものではなく、このような業務処理のための自治体間のネットワークは構築されていない。

 

5 運輸省とのネットワーク

 

ローマ市と運輸省との間にネットワークが構築されており、市民は納税者識別カードを用いて市役所に住所変更の手続きをすれば、自動車の運転免許証の住所変更の手続きも併せて行うことができる。また、このネットワークは、ローマ市警察での犯罪捜査においても利用されている。これは、ローマ市警察において道路交通法の違反の取り締まりなどの際に自動車のナンバープレートからその自動車の所有者をオンラインで検索できるようになっているや)のである。

このネットワークは、専用回線を利用したもので、相互に一定範囲の個人データの参照が可能になっている。セキュリティに対しては、専用回線ゆえに外部からの不正アクセスは基本的にないとみなしている。なお、市民カードの本人識別コードはローマ市が一元管理しており、このデータは市の業務処理に限って利用されている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION