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(1)情報通信インフラ

現在、携帯通信機器による情報通信の分野では、基盤整備が急速に促進されつつある。1995年4月よりデジタル携帯電話による9600bps、そして1997年4月よりPHSによる32kbpsという通信速度でのサービスが開始されており、通信環境の整備が確実に進行している。現時点において、PHsによる32kbpsデータ通信サービスは、通信速度の速さから、画像情報の送信等でデジタル携帯電話に比較し、圧倒的に優位である。

また、PHSの通話エリアの狭さが指摘されてきたが、大都市を中心にカバーエリアも広がりつつあり、その面での障害は薄れつつある。

新しいデータ通信方式として、デジタル携帯電話によるパケット通信サービスが、首都圏の一部と2〜3の市町村で、1997年3月より実施されている。このパケット通信サービスでは28.8kbpsの通信速度を実現しており、PHsの32kbpsと比較して遜色はほとんどない。現状では、サービスエリアが一部の地域に限られているが、今後順次拡大され、1998年3月迄に全国の政令指定都市に広がる予定である。

静止衛星「N-STAR」を利用した、衛星携帯電話によるデータ通信サービスも既に実施されており、山間部などの地上局のカバーエリア外においての通信を可能にしている。

1998年以降は、衛星携帯電話への新規参入が複数計画されている。1998年の秋には、米国モトローラ社を中心とした民間団体により、66個の低軌道周回衛星を使ったイリジウムと呼ばれる携帯電話向けの衛星通信サービスが開始される予定である。当初は、2.4kbpsの音声通信が中心となるが、2002年には64kbpsまで通信速度が高められる予定にある。さらに、モトローラ社では同社の衛星通信システムを進化統合させた、セレストリィと呼ばれる63個の低軌道周回衛星による衛星通信サービスも構想中である。また、2002年の実用化に向けて、米国マイクロソフト社を中心とした民間団体が、288個の低軌道周回衛星を使った、テレディシックと呼ばれる衛星携帯電話サービスを計画している。この計画では、2Mbpsに及ぶ高速データ通信の実現が見込まれている。同様に、ヨーロッパに本拠を置くスカイブリッジ社も64個の低軌道周回衛星によるサービスを構想中である。

一方、郵政省は2005年の実用化をめざし、1998年度から通信衛星を活用した携帯電話システムの開発に着手する予定である。このシステムでは、総合デジタル通信網(ISDN)と同等の64kbpsのデータ通信速度を確保し、全国どこでも携帯電話が使えるようにする計画であり、2002年に試験衛星を打ち上げ、成功すれば携帯電話専用としては世界初の静止衛星の利用となる。

 

 

 

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