(2) 地域間労働移動の状況
昭和30年代に入ると中学卒の進学希望者及び就業希望者が増えて、家事従事者が減ってくる。これは農村における労働力の受入が苦しくなり二、三男対策として余剰労働力を吐き出そうとしたものでもあった。
また、これら余剰労働力を吸収できない地域から他都府県への就職者が増えて大都市に労働者が集中しはじめた。特に高卒は中卒に比べて大都市に集中する傾向が強かった。
なお、繊維産業の中学卒女子求人は依然として大きい割合を占めている。高卒についてはこのような抜き出た求人はない。
一般的に労働力の地域間労働移動は不況期に少なく好況期に多いが、昭和30年代は高度経済成長が続き、このため若年者を中心に大都市に良質な労働力が集中した。これは、所得水準の低い地域から大都市の所得水準の高い地域へ又は農村部から大都市地域への労働力移動である。そして、それによりますます先進県と後進県或いは都市部と農村部の地域的な格差を生ぜしめ、それにより、また良質な労働力が大都市に集中するという循環を生んだ。
図表2-3を見ると京浜、京阪神及び東海工業地域とその周辺地域の県外就職件数受入れが増大し、その他の地域の県外就職件数受入れが減少している。この傾向はとくに常用労働者の場合に顕著に現れている。また、臨時季節労働者の主な受入れ地は北海道であったが昭和38年には比率が若干減少し、東京オリンピック関係工事その他の建設業の需要で京浜が増大している。