な権限を与えているようにみえる。だが実際の場面においては、法律などに明確な機能や権限の規定がない場合、県知事(国家機関)に実質的な責任があるとみなされる領域も多い。実際、1990年5月17日に制定された「グミナ機関と国家行政機関の間の特別法で規定された事務と権限の分担に関する法律」によれば、540の地方にかかわる事務権限のうちグミナの固有事務とされたものは45%にすぎず、グミナへの委任事務とされたものが17%、支庁の事務とされたものが35%、そして県の事務とされたものが3%と、国家が直接実施する、ないし国家の監督の元で行われる事務が半数以上となっている。また都市計画や経済活動など、実際には権限の分担が明確ではない分野も多く残されているという(Cielecka
and Gibson
1995:26-7も参照)。また委任事務については国家の監督を受ける分、必要な経費は補助金などの形で国が全額負担することとなっている(地方自治法8条など)。だが実際には補助金が一部しか支給されず、実質的に自治体の負担が増えている事例も多いと推定される(8)。
しかもポーランドの場合、グミナの活動に対する国家の広範な介入権限を地方自治法で認めているという問題もある(地方自治法の第10章を参照)。例えばグミナの評議会の議決事項については、グミナの長ないし市長はそれを7日以内に県知事に送付しなければならないが、県知事はその議決が法律などに違反していると判断した場合、議決の無効の判断をなすことができる(地方自治法91条)。またグミナの評議会や幹部会が再三にわたり法令違反を繰り返していると判断される場合には、首相はセイムに対して当該のグミナの評議会、ないし幹部会の解散を提案することができ、もし解散が認められた場合は次の選挙までグミナ機関の機能を遂行する人物を首相が指名できることとされている(同96条)。加えて県知事は首相による任命職であり、しかも地方組織法の規定により大幅な人事権を含む権限を与えられているため、中央の政治的な動向で任命が左右されやすいという問題もある。実際現在の民主左派同盟・農民党の連立政権が成立した後は、同連立政権は「徐々に」各県の県知事の配置替えを進めているとされる。
だが実際に地方自治が中央の行政・政治により制約を受けているかという問題にっいては「地域差」が存在することが考えられ、一概に議論することは難しい。この点にっいてはシヴィアニィエヴィッツ(Swianiewicz1992:92)が大まかな傾向として、中部の旧ロシア領や、東部からの移住者が多い北西部の新領域では中央からの指示待ちという保守的な自治体が多いのに対し、旧ドイツ領の西部やオーストリア領の南東部の自治体は積極的な自立戦略を採用することが多いという指摘を行っている。
さらに今回の調査での自治体に対してのヒアリングでも、権限の少なさや国家の介入という点で国家との関係が問題となることはほとんどなく、特に県と国家は地域における一種のパートナー的な関係にあること、ただ委任事務に関する予算配分