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グミナ間の関係の調整、グミナの経験の普及など補助的な事務に限られ、県の事務に対する直接の関与や監督の権限は保有していない。ただし県議会は県知事や県の組織とは独立した関係にあり、県知事の交代などでその構成や議決が影響を受けることはない。「自治」のためには必ずしも十分な権限を有しているとはいえないが、県が国家行政の機関である現状を考慮した場合、中央の行政に対して自治体の利益を反映させる、もしくは中央や県知事の過剰な介入・監督を回避しグミナの問題をグミナ間で自主管理的に処理することを可能にするという点で、県議会は地方(グミナ)の立場を守るために一定の役割を果たしているとされる。なお県議会は各グミナの評議会がその評議員の中から県議会議員を選出する間接選挙制であり、人口2万人以下のグミナは1名、人口2万人を越え5万人までのグミナは2名、人口10万人までのグミナは3名、以下人口5万人ごとに1名を追加した数の代表を、県議会に派遣することができる(地方自治法78条)。また県議会は議長と副議長2名、他6名の計9名よりなる執行部を議員の中から選出し、議会の招集や議会が開催されていない間の実務などを行う(同第79条)。

議会と地方公共団体の首長の関係については、ポーランドの場合それぞれの地方団体の機構の内部で首長と議会ないしその議長との関係が問題になる可能性は小さい。グミナにおいては首長を含めた幹部会は評議会によって選出されることとなっており、評議会の信任を失った場合幹部会は解任される一方、首長及び幹部会は評議会の決定・支持なしには事実上権限を行使できない場合も多く、しかも幹部会側は評議会の解散権を有していないため、評議会の意向が優先されるシステムとなっている。他方県において、首相が直接任免権を持つ県知事はその県内においては各種人事の任免権や予算の執行権を含めた最高権限を保有しているのに対して、議会の側は県知事との意見交換や、県知事のなした命令に対する意見や勧告、あるいは県知事の人事・決定に対する首相への勧告などが行えるにとどまり、議会自らが県の行政を直接主導する権限は有していない。県レベルではグミナとは逆の首長(知事)優位のシステムが存在しているため、ここでも両者の関係が問題になることは少ない。むしろポーランドの制度で問題となるのは、国家機関としての県と自治体としてのグミナの関係、特に国家・県が地方自治体に対して大幅な介入権限を有していることの方にある。この問題については次で論じる。

(6)国と地方との関係

現在のポーランドでは、地方自治法で「法に別段の規定がある場合を除いて、グミナの活動領域とされる全ての領域に関する権限を有する(強調は引用者)」(地方自治法第18条第1項)と規定しているように、グミナ評議会に対して法的・制度的には広範

 

 

 

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