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第4章 ポーランドの地方制度 一 体制移行諸国の「優等生」? 一

1 はじめに

本稿はポーランドの地方制度の現況に関して基本的な情報を整理したものであるが、同時にポーランドの地方制度が他の「体制移行」諸国(特に東欧諸国)と比較してどのような状況にあるのかに関しても言及を試みている。

ポーランドの場合、地方制度の整備そのものは1989年の円卓会議の時から進められてきた。しかし以下にみるように、地方制度の理念・基盤を示すべき新憲法が社会主義体制の解体後8年を経た現在なお制定されていないこともあり、ポーランドの地方制度は「確立」したといえる状況には至っていない。そもそも歴史的に見た場合、20世紀のポーランドにおいて「確立した」地方制度が存在していたといえる時期を見いだすことは難しく、状況に応じて改編が繰り返されてきたというのが実際のところである。そして現在でも「自治体の重層化」の問題などをめぐり、ポーランドの地方制度は重要な政治的イシューの一つとなっている。

それでも他の東欧諸国と比較した場合、ポーランドは短期間のうちに地方行政制度や財政制度の整備を進め、「地方自治」を機能させはじめているようにもみえる。確かにポーランドの地方自治に関する従来の研究では、地方自治体に対する国家の介入の余地の大きさや、住民の地方共同体に対する関心の低さなどについて問題点を提起しているものも多い(例えば、Podemski1995など)。だが他方で、今回現地調査を行ったポーランドの地方団体は地方の問題に積極的に対処し、住民の立場で地域の問題を解決していこうという意識を有しているようにもみえた。このような従来の研究と現実との差なども踏まえながら、ここではポーランドの地方制度について、その整備されている点と問題点とを考慮しっつ、議論を進めていくこととしたい。

以下では、最初に現在のポーランドの政治・経済状況に関する基本的な状況を説明し、ついで現在の地方制度・財政制度の基本的な形態を整理する。その後、今回現地調査を行った地方団体の概要をまとめ、最後にポーランドと他の東欧諸国の地方制度の比較に際しての着眼点を提示するという構成をとる。

2 現在のポーランドの概要

(1)国の概要

ポーランド共和国は、国土面積32万2,577平方キロメートル、人口は1995年5月段階で3,862万人、人口密度は1平方キロメートル当たり123.5人となる。国土はその90%以上が標高300メートル以下の平地であり、国名(「平原の国」の意)もそこに由来する。平地の割合が高いことから国土を農業に有効に利用できる立場にあり、現在の土地利用状況は46%が農地、森林が28%、牧草地などが13%となっている。そ

 

 

 

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