執行機関のあいだの問題としても重要な論点になるところである。ここに取り上げるようなロシア憲法と構成主体の憲法または憲章のあいだの矛盾・対立は、実はいたるところにあり、この事例もまたそのほんの一例にすぎない。
このアルタイ地方が制定した憲章(共和国の憲法に相当)の連邦憲法との適合性をめぐって、アルタイ地方の行政長官(知事)からロシア連邦憲法裁判所にある事件が提訴された。それによれば、憲章の諸規定が憲法に違反し、それによって組織された地方国家権力機関の体系が憲法体制の原則、権力分立およびそれに由来する国家権力機関の独立性に反し、国家行政とりわけ地方の執行権の長の選挙に参加する市民の権利が保障されておらず、国家権力機関の統一的な体系と矛盾し、ロシア憲法の定める連邦と構成主体の共同管轄事項に属する問題の法的規制の手続に反しているというのである。
問題となった地方憲章の規定とは、「地方立法議会議長は、地方の法律…に署名し」(第71条)、「地方行政庁の機構は、地方行政長官の提案により地方立法議会がこれを承認する」(第81条)、「地方行政長官第1代理、および地方の内務、司法、財政、住民の社会的保護、地方国有財産管理にかんする機関の長は、地方の法律の定める手続により、地方立法議会の同意をえて、これを任命し、解任する」(同上)、「地方行政庁評議会は、地方の生活のもっとも重要な問題にかんする決定を審議し、採択する地方行政庁の合議機関である。/地方行政庁評議会の機構は、地方行政長官の提案により、地方立法議会がこれを承認する」(第82条)、さらには「地方行政長官は、複数候補のなかから地方立法議会が秘密投票により4年任期でこれを選挙する」(第83条)といった条文である。
ロシア連邦の憲法裁判所は、単一の国家権力という憲法原則は、ロシア連邦の構成主体が基本的には執行権と立法権の相互関係についての連邦の機構体系に依拠するよう要請しているとし、そのかぎりでロシア憲法は、立法権と執行権は独立であり、ロシア憲法が定める範囲を越えて執行権を立法権に従属させるような規定を憲章に定めることを禁止しているとした。すなわち、そのような規定は一定の権限にしたがい連邦の執行機関および構成主体の執行機関が単一の執行権力体系を形成するという規定を実現するうえで障害となりうると判断したのである。そのうえで、以下のように論を進める。
ロシア憲法は、構成主体の執行機関の長の選出手続については直接に定めてはいない。しかし、執行権力機関を組織する最高の公務員はその任を直接人民から受け、人民にたいして責任を負うことになっている。ロシア連邦の連邦構造は、単一の国家権力機関の体系に基礎をおき、構成主体における国家権力機関は、連邦と同様の原則にもとづいて編成されている。1994年12月の「ロシア連邦の市民の選挙権の基