本的保障にかんする連邦的法律」は、市民によって選挙される公務員として、構成主体の国家権力の執行機関の長をあげている。行政長官の直接選挙にもとづいて構成主体の執行機関を形成するという手続は、制定された大部分の構成主体の憲章が定めている。アルタイ地方憲章(第83条)はこれとは異なるところがある。また、代表機関が行政庁評議会の機構を承認するという権利(憲章第82条)が行使されれば、構成主体の執行権力の独立という憲法原則は、不可避的に侵害されることになる。憲章に定める行政長官の権限の配分手続、かれらを解任する権利、行政長官の立法議会にたいする年次報告義務の導入、執行権力に課せられた任務の実現に際しての執行権力の自立性の制限、法創造という枠を越える代表権力機関の機能の配分は、権力の明らかな不均衡を生み、立法権力の優越をもたらし、代表機関にその固有の機能ではない執行権力の機能まで与えたものとなっている。
こうして、憲法裁判所は、行政長官や公務員の解任についての立法議会の権限にっいて、留保つきでそれを認めたものの、立法議会議長の地方の法律に署名する権限を定めた部分、公務員の解任と行政庁評議会の構成につき立法議会の同意を要するとした部分、立法議会が行政長官を選挙するとした部分は、ロシア憲法に適合しないものと判断したのである。
憲法裁判所は、この「アルタイ地方」事件以外にも、チタ州憲章の憲法適合性にかんするこの種の事件を取り扱っており、連邦の憲法体制の原則の連邦全体での「貫徹」に腐心している。立法機関と執行機関のこうした争いはなお各地で継続しているし、地方の中央への「対抗」(この中身については後述)から「憲法戦争」「法律戦争」ともいわれる事態は、先の事例にも見られるように相変わらずロシアの政治・法律にっいてわかりにくくしているといわなければならない。そして、これは地方自治体における議会と首長の関係に関連する論点でもある。
以上の前提的な議論を踏まえて、以下にロシアの地方制度と地方自治について、概説的にその現状を論ずることにしよう。
2 連邦国家体制と「地方」分権
(1)ロシアの連邦構造
さて、以上に紹介したような深刻な状況にあるロシアの連邦制と地方制度は、どのようなものとして構想され、制度化されているのであろうか。
最初にふれたようにロシアの連邦構造は、民族的原理と領域的行政的原理の異なった性格にもとづいて、その編成をなしている。それは、ソ連時代や93年憲法以前とは異なっているし、主権国家の連合(あるいは同盟)でもなく、各構成主体の離脱の自由を認めたものともなっていない。憲法上も、その構成主体の同権を基礎におく連