日本財団 図書館


ではない。今日では、議会議員が、直接住民の投票によって選出される制度は、ほぼすべての国で原則となっているといってよいが、首長の選出方法は国によって多様である。

地域代表として直接選出される場合には、その首長は、地域の利益を代表し、それが中央政府の利益と対立する場合には、当然自治体の側につく。それは、場合によっては、中央政府にとって国家統合の大きな障害となりかねない。他方、戦前の日本の県知事のように、首長が中央政府の任命制の場合もありうる。この場合には、中央と地方の対立は、首長と地域住民の代表である議会との間で生じることになる。首長の権限が大きければ大きいほど、彼がどのような手続で選出されるかは、まさに中央地方の力関係を決することになるといえよう。

実際には、この中間に、地域が首長を選ぶ場合にも、間接的に議会が選出する場合、すなわち議院内閣制に類似した型(カウンシル制)もあり、議会が中央と協調的な名望家層を基盤として形成されている場合などには、それが選出する首長は中央との調整機能を果たすことが期待される。さらに、首長が直接ないし間接に選出される場合にも、中央政府の承認ないし同意が条件とする制度も考えられる。実際には、それぞれの国の事情によって、さらに複雑な制度も存在するであろう。いずれにしても、この点は、地方制度を設計する上で最も重要な論点である。

(4)地方財政

法制度上、地方団体に広範な自治権が認められ、その代表を選出する制度が設けられていたとしても、現実に地域住民に充分な行政サービスを供給するためには、自ら自由に使うことのできる財源が充分になくてはならない。この財源を自治体がいかに獲得するかという問題も、地方制度の設計における難しい論点の一つである。

多くの国では、地域間に格差が存在することから、すべての行政活動を自主財源で行うことを原則とすると、行政水準の格差はますます拡大する。それを是正するためには、何らかの財政調整の仕組が必要であるが、その仕組は基本的に豊かな地域から貧しい地域へ資金の再配分を行うものである以上、地域間対立を惹起する可能性が高く、その際、配分を効果的に行おうとすれば、中央政府による集権的な配分制度が不可欠となる。

さらに実際には、地方自治体の財政能力は、規模の問題もあり、一般に高くない。そこで、多くの国で、国から地方への補助金や交付金等の制度が存在しており、現実には、それらの補助によって、地域における最低限の行政サービスの確保がなされていることが多い。いうまでもなく、その割合が多いほど、地方自治の範囲は狭くなる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION