現在、進められている規制緩和政策の中で、内航海運は『船腹調整制度の計画的な解消』を求められている。この船腹調整制度の計画的解消という課題は、平成8年3月の閣議決定によって、「モーダルシフト船(コンテナ船、RORO船)は、平成10年度末までに船腹調整事業の対象外とする。その他の船舶は、荷主の理解と協力を得ながら、5年間を目途として所要の環境整備に努め、その達成状況を踏まえて同事業への依存の解消の時期の明確化を図る。」という具体的内容が示された。そこで、運輸省の指示を受けて、総連合では平成8年6月に全体計画としての「環境整備の計画」、同年7月に「平成8年度の実施計画」を運輸省に提出した。
その主な内容は内航海運業界の自主努力による実施策と行政当局及び荷主への協力要請をする施策とがある。内航海運業界としては自己資本比率の充実、グループ化・協業化の推進、船舶建造の円滑化、船腹需給の適正化、運賃・用船料の適正化、船員の安定的確保、輸送の効率化、取引関係の優越的地位の濫用防止と受注機会の均等化をあげている。なお、行政当局へは船舶建造の円滑化、船員の安定的確保等を要請している。また、利用者である荷主には、運賃の適正化、輸送の効率化、取引関係の優越的地位の濫用防止と受注機会の均等化等を要請している。
このように、内航海運業界として自主的に行いうる施策は自己資本比率の充実、グループ化・協業化の推進と用船料の適正化等であり、内航海運業界としては、行政の支援や荷主の協力を得ながら徐々に船腹整備事業への依存を解消していく計画を示している。
今回の実態調査でも、中小業者を主体に船腹調整制度の廃止は企業存続の危機であるとみている中小運送業者が多く、これらの事業者は船腹調整制度の存続や段階的な対応を求める意見が多い。特に、業績の悪い内航運送業者では、大半の業者が船腹過剰を主な原因としてあげており、船腹調整は必要であるとみている。内航海運業界のなかでも大手オペレーターの中には船腹調整制度による人為的な需給調整をやめて自然に任せるべきだという意見もあるものの、中小業者や個人には経営の安定と内航輸送の安定に寄与しているのだから存続すべきだという意見が圧倒的に多い。
一方、運輸省は平成8年12月に運輸行政における需給調整を原則廃止し、「内航海運においては、船腹調整事業の解消を前倒しの方向で検討する」と発表したことは、内航海運業界に大きな衝撃を与えた。こうした発表の背景には、経済のあらゆる分野においてビッグバンが求められており、日本経済の活力を再生させるためには大胆な規制緩和を推進するという政府の方針にそったものと思われる。たしかに世界経済の動きの中で国際競争力の低下してきた日本経済の現状を考えると、各種の規制に縛られた国内物流構造の中での規制緩和はやむを得ないとしても、歴史的に大手荷主産業から生産と輸送の両輪と位置付けられ、日本の産業基盤を支えてきた内航海運業界が、そのよりどころとしてきた船腹調整制度の存亡について、せめて平成8年度の閣議決定は守ってほしいと願うのを否定するこ