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を得るため」「新しいキャリアをつけ加えるため」「コミュニティ内での認知を受けるため」「自信をつけるため」「活動的になるため」「他者に影響する(カーネーギー風にいえば、人を動かす)ため」「スキルの修得」「趣味の活用」「お返し」「社会復帰」「楽しみ」など、30ほどの項目が挙がっており、セールス的センスが触発される。また募集に関しては、ローカル紙・テレビ・ラジオの使い方、広告の勘所も述べられているが、依然ロコミ(Words of mouth)が最も有力な手段であり、そのために「熱心なスタッフ」と「ハッピーなボランティア」の存在と育成がいかに重要であるかが説明されている。さらに、申請フォームの例、面接における心得(例えばyeSかnoかでなく、本人に色々話させるような質問の仕方)、オリエンテーションのトピックスとチェックリスト、現場での監督における技術的諸項目が明示されている。そうして最後に、苦情・紛争および解任に関する処理手続きがくる、すなわち解任にあたっては、担当者は上司ないし当該委員会に対して早めに警告を発し、その原因となった苦情等に関する書類を整備し、日時・関係者等を明確にし、本人には書面に先だって2度の口頭による話し合いの機会をもち、最後は感謝の言葉と共に奉仕の開始と終了の目付を記した手紙を送付する、という段取りをとることになる。

NSWボランティアセンターの担当者によれば、ボランティア・マネジメントへの関心が高まったのは比較的最近のことだといい、この分野での急速な研修と人材ニーズの高まりは、1996年秋の「NSWクール・オブ・ボランティア・マネジメント」の設立に象徴されているという12)。このスクールは、同センターとシドニー工科大学(UTS)とのジョイント・プロジェクトとして発足、財政的には政府からの補助・企業からの寄付および学費で支えられ、1997年春から学生を受け入れてスタートすることになっている。マーケットとしても全豪を超え、東南アジアから南アフリカまでを射程に入れている。さらに1998年からは大学院プログラムの発足を予定されており、医療・福祉・消防といった個別領域とは異なる、ボランティア活動横断的なプロフェッショナルの育成を目指す。専門職業集団に不可欠の「倫理綱領(CodeofEthics)」も既に制定されている。

以上紹介したボランティア・マネジメントをめぐる動きを一言で表すならば、ボランティア活動の「制度化」がシドニー市を中心に進行している、ということができよう。そしてその専門職業化の動向は、ちょうどアメリカで行政学大学院(MPAコース)が定着していったことと、規模こそ違うがアナロジカルであり、いわば法学・経済学・農学・林学・土木工学といった行政に必要な諸々のプロフェッショナルを相互に調整し、それこそ組織と

 

 

 

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