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チャンスではないかというのである。大げさにいえば、そこから新しい人生が展開するかもしれない。要するにギブ・アンド・テイクの関係の可能性を、行政と市民がもっと模索する必要があるということだろう。

 

5.ボランティアの“マネジメント”

以上、日常および非日常のボランタリズムの事例をみてきたが、いずれの場合にも気づくことは、市民相談のようにスタッフ全員がボランティアからなっているか、もしくはきわめて少数の有給(専任)職員が百人単位の多数のボランティアを動かしていることである。実際、オーストラリア全体での非営利の慈善的団体50万のうち、実に9割以上の46万強の団体が有給職員をもたない純ボランティア組織といわれる9)。オーストラリアのボランティアの世界は、決して行政組織のごく周辺的な部門とか専任スタッフ組織の補完とかの、あってもなくても大勢に影響しないような代物ではない。ボランティア活動の貢献を金銭タームに換算するとは全国で年間30億ドルに達するといわれるように、それは政府・民間と並ぶところの独立した一つの部門(セクター)である、したがって、ボランティア・オーガナイザー、コーディネーター、ディレクターたちにかかる人事管理・危機管理(マネジメント)の負担は、ことによると時に政府・民間企業以上に重い。そこで最後に、シドニーにある「ニューサウスウェールズ・ボランティアセンター」での研修・教育活動を例に、ボランティア・マネジメントという日本ではまだ取り上げられていないテーマについて考えてみたい。

ボランティア・センターという名称の事務所はおそらく各地にあり(日本でも都市部には自治体ごとにある)、例えばブリスベンにはボランティアのスタッフ数名で斡旋的業務を行っており、それ自体が牧歌的・ボランティア的な雰囲気をもっている。しかるに上記NSWボランティアセンターはシドニー市中心部にあるビルの数フロアに居を構え、14名の有給スタッフと多数のボランティア・スタッフがコンピュータの完備したオフィス環境で勤務している。年間予算規模は1995−96年度で126万ドルで、州政府からの補助金、および企業・団体・個人からの大口・小口の寄付を財源としている10)。NSW州の千を超えるボランタリー組織が登録会員として情報提供と各種研修サービスを受けており、また主として失業者や英語を母国語としない人々との個人面接による斡旋の数は、同年度で3679件あった、同センターは、そのディレクターのマーガレット・ベル女史が「全豪ボランティアリング

 

 

 

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