以上、日常および非日常のボランタリズムの事例をみてきたが、いずれの場合にも気づくことは、市民相談のようにスタッフ全員がボランティアからなっているか、もしくはきわめて少数の有給(専任)職員が百人単位の多数のボランティアを動かしていることである。実際、オーストラリア全体での非営利の慈善的団体50万のうち、実に9割以上の46万強の団体が有給職員をもたない純ボランティア組織といわれる9)。オーストラリアのボランティアの世界は、決して行政組織のごく周辺的な部門とか専任スタッフ組織の補完とかの、あってもなくても大勢に影響しないような代物ではない。ボランティア活動の貢献を金銭タームに換算するとは全国で年間30億ドルに達するといわれるように、それは政府・民間と並ぶところの独立した一つの部門(セクター)である、したがって、ボランティア・オーガナイザー、コーディネーター、ディレクターたちにかかる人事管理・危機管理(マネジメント)の負担は、ことによると時に政府・民間企業以上に重い。そこで最後に、シドニーにある「ニューサウスウェールズ・ボランティアセンター」での研修・教育活動を例に、ボランティア・マネジメントという日本ではまだ取り上げられていないテーマについて考えてみたい。