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はコミュニティー紙やラジオ放送、関係協会などを通じて行われるものの、口コミが最も有力な手段だという。ボランティア・オーガナイザーの1人は、家族のターミナルケアなどの経験のある者には、いかに慰問や在宅ケアが報いの多い仕事であるかがわかるのだが、資金援助を政府から受けているものの、その中のボランティア(コミュニティ・ケア)部門についていえば、全くの自律性と独立採算を保っているのである。

4.非日常におけるボランティア

非日常のボランティアとしては、海難救助・災害対策・山火事消火・復旧援助などがあげられる。いずれも短時間に多数の人間を動因する必要があり、組織的な行動が求められ、ボランティアたちにも生命の危険が及び、要するに危機管理的対応が問われるという意味で、これまでにみた日常的なボランティアとは条件を大きく異にしている。
しかし、一糸乱れぬ組織的行動を可能にするのは日常的なトレーニングにほかならず、また現場でのリーダーシップを生かすのも、メンバー間の使命や優先順位や役割分担に関する情報の日常的共有だろう。オーストラリアのような広い国土では、社会生活は自然の影響をうけやすいが、他方、災害対策として行政が常時専任スタッフを配置するには、人的・財政的資源との関係であまりに無駄が多い。ちょうど民兵制度が、平時における農民に有事の際は武器を取って結束させるように、この国の防災体制は日常的にボランティアをトレーニングしておき、災害時に備えるのである。
本節では、クイーンズランド州とブリスベン市の縦系列の防災ボランティア体制を紹介し、ボランティアのマネジメントと組織化という問題について考えてみたい。
(1)クイーンズランド州の災害対策
同州の防災事業は「緊急対策省」(Department of Emergency Services)が担当し、大臣・事務局長・事務局次長の下に6つの局が置かれ、そのうちの一つ「災害対策局」(Counter Disaster Services)が管轄している。同局(CDS)は局長の下、「災害管理部門」と「州緊急対策部門」(State Emergency Services,SES)とからなり、改めて述べるように後者のSESは災害現場の自治体に縦の系列をもつ、省の全職員数4800人のうち、同局(CDS)の専任スタッフはわずか66人であるが、ここが州全体で実に3万2000人のボランテ

 

 

 

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