われわれは誰をも裁かない。
われわれは求められた情報はどんなものでも提供する。
われわれは相談者の問題に耳を傾ける、
われわれは法律家ではなく、専門家に照会する。
われわれは“何かできることがありますか”とたずね、口先だけに終わらない」。
このように、市民相談のスタッフは自らの能力と役割を限定的にとらえ、最低限の情報提供と照会を行うわけであるが、手渡すパンフレット類は膨大な種類にのぼり、データベースの量も多いため、一定機関の研修は不可欠である。スタッフの大部分が年輩の女性で、30人のうち常時最低3人が交代で勤務し、20年近くも続けている人からごく最近始めた人まで、経験も職業的背景もさまざまである。
ボランティアで市民相談をすることになったきっかけについては、相当数が口コミや友人に誘われたといい、ラジオの募集を聞いてきた人もあり、子育てがおわったから、退職したから、退屈だから、といった動機が一般的のようであった。人手不足で困ったこともないという。場所こそ市庁舎の中にあるが、行政との関係はむしろほとんどなく、代表者(President)のエレン・マリー女史がある紹介記事に書いているように、「市民により市民のために」活動する、まさに市民社会の土壌に生じたボランティア活動といえよう。
(2) ブルー・ナーシング・サービス(ブリスベン)
オーストラリアにはキリスト教系の福祉団体がきわめて多い。ブリスベン市でも、ほとんどの教会が信徒集団を超えた対社会活動(outreach)として、福祉関係のサービスを行っているといわれ、いくつかの比較的大きな教会は宗教色をとって福祉部門を独立させている、例えば、合同教会(∪niting
Church)は「ウェスレー・ミッション」(Wesley Mission)という福祉団体を置き、同教会堂に隣接したミッション事務局を中心に活動している、あるいは、英国国教会と並んでこの国の最大教派であるカソリック教会は、「セント・ビンセント・ド・ポール」(St.Vincent
de Paul)という団体を通してさまざまなコミュニティ・サービスを展開している。これらは慈善団体(Charitab1e
O?ranizations)として免税措置を受け、また福祉サービスの種類に応じて州政府からの補助金を受けている。ほとんどの団体がボランティアを活用しており、ある教会の牧師は、政府以外ではキリスト教会はコミュニティの諸問題に取り組んでいるこの国最大の組織だろうと語っていた、こうした団体の中でもとくに伝統のあるものの一つに「ブルー・ナーシング・サービ
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