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項目が複数回答なので優先順位は明らかでないが、約6割のボランティアが自分の満足のためだと回答しており、これに社会的接触、人や地域に役立ちたい、何か価値あることをしたい、という動機が4〜3割で続いている。動機の把握の重要性については、「ボランティア・マネジメント」の項目で改めて触れるが、ボランティアたちが決して自己犠牲からではなく、さまざまな個人的な利益に基づいて活動を行っている点は注目しておいてよい。

以下、日常と非日常という2つの側面から、オーストラリアにおけるボランティア活動の実態を事例に即して明らかにしていきたい。

 

3. 日常におけるボランティア

 

先の調査にも示されているように、オーストラリアにおけるボランティア活動の内容は、スポーツ・リクリエーション・趣味、福祉・コミュニティ・サービス、教育・研修、教会活動といったごく日常的なものが大部分を占めている。また、各分野の中でどのような活動に主として関与しているかという質問に対しても、多い順から、資金集め、マネジメント的業務、食事の準備・配給、指導、日々の組織化(連絡)、一般事務といった、ルーティン的な活動で占められている。その意味で、ボランティアは日常の中に根ざし、生活に織り込まれ、市民社会に融解しているといってよい。

しかるに、スポーツとひと口にいっても、少年クリケット・チームのコーチや審判のようなケースもあれば、2000年のシドニー・オリンピックに参加するであろう各種ボランティアたちのように、それこそ生涯一度の「非日常」のイベントとして参加するケースもあろう。また、日頃地味な福祉活動を行っているグループが、災害で生じた避難民への援助活動で“クリティカルな”(臨界的)経験をすることも実際少なくないという。さらにいえば、ボランティア活動にかかわってこなかった人々にとっては、退職後コミュニティで奉仕活動を始めることさえもが、一つのささやかな非日常を意味するかも知れない。そしてそれを可能にした契機が、草の根レベルでの友人関係や人的繋がりだったとすれば、静的な市民社会の中からボランタリズムが立ち上がるダイナミズムを物語っているとも考えられよう。こうした視点から以下、4つの活動をとり上げてみることにする。

 

 

 

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