らば、オーストラリアのボランティア活動が現在抱えている課題を検討することは、諸外国に対しても何らかの教訓を含んでいると考えられる。以上のようなこの国の特殊性と各国との共通性に留意しつつ、続いて統計資料に現れたボランティア活動の動向を見ていくことにしたい。
(2) ボランティアの定義・人口・活動時間
1995年、オーストラリア(連邦)政府はボランティア活動に関する初めての全国調査に基づき、「オーストラリアのボランタリー・ワーク」(オーストラリア統計局刊)と題するリポートを発表した。むろん「ボランティア」「ボランタリー・ワーク」「ボランタリズム」といった言葉は古くから使われてきた日常用語だが、この調査においてボランティアは次のように定義されている。すなわち「ボランティアとは、一定の組織もしくは集団を通じて、時間・サービス・技能といった形の援助を、無償かつ自発的に提供する人々のことを指す」。3)
また、連邦雇用教育省の委託を受けて行われた調査報告書「オーストラリアのボランティアリング」では、「個人の自由意志」「コミュニティヘの奉仕」「(交通費等の実費を除き)金銭的な無報酬」の3点を基本的要素としてあげている。4)
この「ボランティア=無償かつ自発的奉仕」という図式は、この国のごく一般的な理解と重なっている。筆者自身の調査でも、近年日本で話題になっている「有償ボランティア」といった考え方には全く接しなかった。専門能力・経験・責任に関係なく、どの組織でもボランティアとは無給・無償の労働力を指していた。また、「一定の組織もしくは集団」について特別の条件が付けられているわけではなく、法人格や登録の有無などもここでは問題とされていない。
この広い定義によれば、全国で1年間に263万9500人がボランティア活動に参加しており、この数は15歳以上の全人口の19%に相当する5)。1年間の数字であるため、過去に何らかのボランティア活動に従事した人の数はこれよりかなり多いと考えられる。また、19%という割合について、シドニーのボランティア・センターの担当者は、自分の実感と比べてやや低い数字だといい、アンケートでボランティアをしたことがないと回答した人に聞いてみると、実際には例えば小学校での朗読サービスなど、本人は自覚しないで行っているボランティア活動のケースは相当数あるだろうと語っていた。
さて、264万人のボランティア人口が1年間に従事したボランティア活動の時間は、4億
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