以上の3点に加え、「歴史」の軸も無視しえない。近年世界各国で、行政と市民の双方がボランティア活動に注目し始めた背景には、一方における行政自体の限界の認識と、他方における国際化・高齢化・都市化・環境保全といった新しい課題の比重増大が関係していると考えられる。わが国では、1995年1月の阪神淡路大震災を機にボランティアヘの関心が高まったという印象が強いが、サラモンらが「非営利セクターは、最近世界中で社会福祉や開発政策の将来にわたる議論の中心的地位を占めてきている」2)と指摘するように、むしろ行政とボランティア、政府と非営利セクターの関係は、21世紀の新しい課題として、今後の社会科学が理論と実践の両面から研究・開発してゆかねばならないテーマといえる。最近の議論を見る限り、行政への信頼低下に反比例するかのように、ボランティアヘの評価と期待が高まってきたといってよい。仮に、行政の発達・変容に関して一定のパタンないし法則のようなものがあるとすれば、今後行政活動は、ボランティア(非営利セクターもしくは市民セクター)活動とどのような関係を形成し、またそれに伴って行政自体がどう変質していくのか、そのプロセスをいわば一つの「歴史必然」として把握することはある程度まで可能であり、また必要であろう。筆者自身の見方では、行政は「公務」「公益」といったシンポルを核に市民社会から自律化・結晶化していくよりも、市民自身がもつ「奉仕」「協力」「自己決定」といった価値を媒介に、市民社会の中にむしろ融解していく可能性が高いのではないかと考えている。