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(2)世界経済環境:資源、市場システム、安全保障

 世界経済環境を規定してくる長期的な大きな要因についても着目しておく必要があろう。第1は、食糧やエネルギーのような資源問題である。世界の人口は現状の57億人から21世紀中葉には100億人以上へ増えると予想され、資源問題は人穎的な規模で厳しい制約になるおそれがある。日本はとりわけ、膨張する中国に隣接しており、資源問題ならびに地球環境劣化の影響を大きく蒙る可能性が大きい。

 第2は、市場システムである。自由な通商、安全で安定した通貨システム、開かれた投資環境などの確保は日本の将来の繁栄のためには必要不可欠の要素である。第3は、安全保障である。侵略に対する有効な抑止力の長期的確保と、テロや局地紛争などの未然防止能力の開発、整備が重要課題だ。

 (3)日本外交の進路:日本の長期戦略の方向

 以上の要因を総合して、最後に、日本外交の進路を日本の長期戦略の方向の選択という観点からまとめて見たい。

 (a)通商と投資に関しては、グローバリズム(開かれた多国間主義)を基軸とし、APECの開かれた地域協力に積極的に貢献する事で、自らの経済構造改革を進めると同時に地域と世界の発展に寄与するという基本的立場を堅持すべきである。

 (b)地域主義が世界各地で進展している現実をふまえ、それらの展開が日本の長期的国益を損なう事のないよう、グローバリズム堅持のために積極的に働きかけると同時に、必要に応じて利害を共通する国々との協力による対抗手段をもとり得る準備を進める。

(c)アメリカの動きは日本のグローバリズム戦略の面からや、APECや日米関係の面からも最も注視すべきである。アメリカはWT0などの次元でグローバリズムを追求する構えを見せると同時に、太平洋、大西洋、アメリカ大陸なと世界全域にかかわる地域経済圏と地域主義の強化にも熱心であり、さらに二国間主義への傾斜も著しい。日本はアメリカとの協力、協調を基本としつつも、利益が背反する時には、国益を有効に主張できるための準備をもしておくべきである。

 

 

 

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