NAFTAへも拡大が構想され、南米、大西洋圏など多くの地域で地域主義の動きが強まっている事は否定できない。そしてこれらの地域主義に域内特恵主義的あるいは域外差別的な性格と、その限りで資源配分に歪みをもたらす傾向が部分的にせよ付随する側面がある事は否定できない。そうした現実の中で、ひとり日本が純然たるグローバリズムを追求するだけで前述した国益を最大限に確保する事は困難であるように思われる。
(2)リージョナリズム戦略の可能性と現実性
しかし、それでは逆に、日本には地域主義を主軸に世界戦略を展開してゆく可能性はあるだろうか。それをするとすれば日本はその地域を韓国や中国など東アジア経済圏に求めるのが自然であろう。実際、経済面に限るならば、日・中・韓などの東アジア経済目には域内交流の大きなメリットがある事は否定できない。
しかし、これらの国々の歴史的背景や政治的関係なとを考えると、関税同盟や自由貿易地域などの制度化を含む経済目の形成は、少なくとも近い将来には現実性が無いであろう。
一方、これよりも広い地域、いうなればいわゆるEAEC諸国と地域経済目を制度化する事も考えられるが、日本にとっては政治的な難しさだけでなく、地域経済目にあまり深くコミットする事は、それが域外に対して差別性を持つならば、グローバリズム主軸戦略とくらべむしろデメリットが大きくなるおそれがある。
(3)グローバリスムとリージョナリスムの混合戦略
以上のことがらを考応すると、日本がとるべき外交戦略は自ずから明らかになる。
それはグローバリズムを基軸とし、地域的にはAPECのような広域でかつ外に開かれた域内協力体制に積極的に貢献しつつメンバー諸国の信用と信頼を確保してゆくというものであろう。そしてグローバリズムを基軸とした日本の国益の追求が他の地域主義の浸蝕によって阻害されたり侵害されたりする事のないように力を尽くす事である。
そのためには、一方で、WT0に代表される多国間主義の普及と強化に注力する事が必要であり、他方では、APECの発展に貢献して培った信頼と発言力を基礎として、他の地域主義の差別的で望ましからざる影響が顕著になりあるいは憂慮される時には、必要な是正措置あるいは対抗手段をとり得る準備を怠らないという事である。