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別性というGATTの基本概念に反するが故に、日本としては反対すべきである。したがって、共通関税同盟より性格の悪い自由貿易地域はWTO条項を変更してでも禁止すべきであろう。

 この原則を守るのであれば、日本はAPECのような「非特恵的リージョナリズム」は積極的に進めるべきだ。それが、自由化について互いにピア・プレッシャーを掛け合い、貿易や直接投資を円滑にし、人的、技術上のインフラ作りを通して開発へ協力することができるからだ。APECが本当に、最恵国待遇に基づいて域内自由化を推進できるか、バンクーバー会議(1998年)が試金石となる。

 しかも、そうした地域協力集団が、他の地域に対し自由化の圧力をもかけたり、特恵経済地域がいっそう保護貿易へ傾斜していくのを防ぐことに役立てれば、大いに歓迎されるべきであろう。またそのように日本は、非特恵的リージョナリズムを交渉上のてこ(leverage)として利用し、最恵国待遇に基づくマルチラテラリズムを積極的に推し進めなければならない。

4.三大通貨圏の形成とリージョナリズム

 三大通貨(米ドル、ユーロ、円)ブロックが世界経済の中に出来上がるのではないか、という危倶がよく聞かれる。しかし、ここでもブロックという言葉が、1930年代の決済同盟にみられた、決済通貨の選択の制限とか、資本取引の制限を意味するのであれば、それは大間違いである。そうした誤解を避けたいのであれば、三大通貨圏(Zone)とでも呼ぶべきだろう。一国の通貨が世界通貨になったり、広い地域経済圏で基軸通貨になったりするのは、かなりの程度、自然な経済発展(natural evolution)の結果である。何か特別の経済政策でも採用すれば、どの国の通貨でも世界通貨になれる、というものではないことは、容易に想像がつく。その国が世界貿易の中に占めるウェイトの大きさ、その時代における高度な貿易構造と強い国際競争力、国際資本移動の大きな担い手、国際金融取引の中心地、そうして物価安定といったファンダメンタルズが揃ってこそ、一国の国民通貨が、他の国の人々によっても自然に授受され、貿易の支払手段、貿易の価格表示手段、そう

 

 

 

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