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易協定を広げてゆき、それが世界貿易の自由化につながると考えるのは、かなり非現実的だといわざるを得ないのである。

2.APECの基本的性格

以上の貿易面に直目したリージョナリズムの最大の問題は、それが関税同盟型であれ自由貿易地域型であれ、共通項は特恵貿易協定(PTA)であり、最恵国待遇条項の原則にもとった差別的な地域協定だ、という点である。ではAPECを性格づける「オープン・リージョナリズム」は形容矛盾なのだろうか。

 先ず「オープン」とは、最恵国待遇条項を遵守するということだ。仮にAPECの加盟国が関税引き下げに踏み切っても、その恩恵を加盟国だけに限るのではなく、第三国の非加盟国にも均霑し適用していく、という意味である。つまり「オープン」の意味は、非特恵的、無差別的である。となると、そこでいうリージョナリズムは貿易論でいう特恵貿易協定のことではないことが判る。そこでいうリージョナリズムとは、次の三本柱から成るAPECの地域協力のことである三本柱とは、(1)最恵国待遇に基づいて自由化を進めるに当たってのピア・プレッシャー(仲間同志の圧力の掛け合い)の役割、(2)貿易や直接投資の円滑化(faclitaion)のための域内協力(関税手続きの簡素化、直接投資のルール作り、商業ビザの共通化など)、(3)人的資本の開発や技術移転のための域内協力(中小企業支援、教育投資支援など)、の3つから成り立っている。これは地域協力であって特恵関税地域ではない。一言でいえばAPECは「非特恵的リージョナリズム」(non-preferential regionalism)である。

3.日本にとっての選択

 換言すると、リージョナリズムは、特恵的であれば、それは最恵国待遇に基づく無差

 

 

 

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