を受けるわけではない。だから、制度上は第三国が差別されても、実質的には必ずそうなるとは限らない。勿論反対の場合も有り得るのである。ここが戦前のブロックとは異なり、GATT規定上も灰色の判決になってしまったのである(GATT24条)。
(4)地域貿易協定関税同盟と自由貿易地域
戦後の地域貿易協定には基本的に2つの型がある。1つはEC型の関税同盟だ。域内関税の撤廃(農業のように例外はある)と同時に、域外共通関税を設ける。域外共通関税の水準は、加盟国の関税を平均したものであったり(ECの場合)、低い方に合わせる場合もある(ECに新しい加盟国が入る場合)。
もう1つの型は、自由貿易地域と呼ばれる。代表例はNAFTAである。自由貿易地域は、加盟国の域内関税はゼロにする点では同じだが、第三国に対する関税を共通にするわけではなく、加盟国がこれまで通り決めることができる。そうすると、非常に厄介なことが起きる。貿易迂回(trade deflection)である。第三国が自由貿易地域の加盟国に輸出するとき、域外関税が一番低い加盟国へ向けてまず輸出し、そのあとで他の加盟国の市場へ再輸出すればよい。第三国からの輸出が迂回して高関税の加盟国にも入ってくるわけだ。これが貿易迂回である。これを防ぐためには、加盟国への輸入がもともととこの原産地からやってきたのか、それを調べなければならない。これが原産地規則(rules of origin)という規則である。この規則を適用するには膨大な資料が必要であり、そのコストは貿易の数パーセントにも達する場合があるといわれる。
そうなると、いっそ加盟国内にまず直接投資(FDI)を行い、その生産物を関税の高い加盟国へ輸出すれば安上がりになる。しかし、本来ならば他の国でより効率的に行われるかも知れない直接投資を、原産地規則のコストを回避するためにわざわざ行ったのであるとすると、これは「直接投資転換効果」(FDI
diversion)を引き起こしかねない。
しかも、グローバリゼーションの下で多国籍企業が国際分業上のネットワークを地球規模で展開し文宇どおりボーダーレスの経済が成立しつつあるとき、とのボーダーの中で生産されたかを決める原産地規則は時代逆行そのもののルールである。
こうした問題があるにも拘らず米国が自由貿易地域を押し広めたがる理由は何だろうか。2つの大きな理由がある。1つは、加盟国が120カ国に及ぶGATT(WT0)の場で、多角的貿易交渉(multi
lateral negotiation)を通して貿易の自由化を進めよう