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III:グローバリズムの光と影

1.グローバリズムの3つの側面

 グローバリズムという、ある種とらえどころのない概念について、ここではまず3つの側面について、やや批判的に考えてみたい。グローバリズムの進展という現象が重要であるにしても、それほど単純には捉えきれない要素があると思うからである。

 3つの側面の第1は、思想としてのグローバリズム、第2は、状況としてのグローバリズム、そして第3は、制度としてのグローバリズムである。

(1)思想としてのグローバリスム

 思想としてのグローバリズムにもさまざまなものが考えられる。第1は「国際主義」とでもいう考え方である。これは、地球は1つではあるけれとも、すべて国家から形成されており、その国家間の関係から地球は成り立っている。地球単位で物事を考えるのがグローバリズムだとしても、その根本は国家であり、国家間の関係だというのが、この考え方である。グローバリズムの中では最も保守的な思想であるといってよい。

 これに対して、単に国家間の関係というだけでなく、世界を1つの国家にまとめてしまおうという考え方もありうる。世界政府主義、世界連邦主義である。さらに、地球をそもそも国家というもので考えることは間違いであって、世界市民の共同体として考えるべきだという考え方、コスモポリタニズム(世界市民主義)というものも存在する。このような人々の連帯を、普遍宗教による統合という形で考えれば、一種の宗教普遍主義(エキュメニカリズム)という形になるのであろう。

 しかしながら、最近のグローバリズムについての関心は、ここであげたような世界政府主義や世界市民主義、宗教的普遍主義には向かっていないように思える。さりとて、単なる国際主義というわけでもない、というのが現在の思想状況であろう。その中で、現実には最も大きな影響力を持っているのは、政治的経済的リベラリズムの思想であろう。民主主義的な政治体制を世界に広め、市場経済を世界に広めるのがよいことだ、と

 

 

 

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