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 ない。続一基準の眼目は財政赤字の削減目標である。これは1つの金融政策と各国独自の財政政策、進みゆく通貨統合と遅れている政治統合を調和させるためのエ夫の1つである。

 何れにせよ、政治統合がヨーロッパにとっての目標、夢であることには変わりはなく、各国の指導者は幾代にもわたって政治統合を追求してきた。この目標を掲げているが故に・ヨーロッパは・言語・宗教・文化の違いを乗りこえ、半世紀の長期にわたり、戦争のない、平和を享受しているといえる。

2.南北アメリカ:NAFTAとMERCOSUR

(1)NAFTA

NAFTAは、EUと比較して経済統合のいわゆる深化(Deepening)の初歩的段階にある・貿易・投資レジームとしても、先進国と開発途上国との間の経済統合としても関心をもたざるをえない。

 貿易・投資レジームとしてのNAFTAをみるとき、貿易の自由化については、段階的な関税の引き下げなど具体的スケジュールをもっている。しかし原産地規制は多くの問題を抱えており、域内の生産者は国際競争で不利になるおそれがあるといわれている。

 これに対して投資については、3カ国の投資家が全て、それぞれの国内投資家と同様の取り扱いを受けるという原則がつらぬかれていて評価できる。

 このように、NAFTAは、アメリカ、カナダとメキシコ。先進国と開発途上国の自由貿易地域であり、双方の期待が最初から異なっている。メキシコは、自由貿易地域のもとで直接投資の拡大を期待した。その結果として、雇用が増え、成長率が高まる。これに対してアメリカは、自由貿易地域のもとでアメリカの輸出が増加する。輸出先としてのメキシコに期待をかけた。

 自由貿易地域の結果、何が起きたか。アメリカのメキシコ向け輸出の増加が先行した。これがメキシコの治安の悪くなりつつある時期と重なり、政権交代による為替政策の失敗と重なった。NAFTAに対する期待の違いがメキシコ危機の背景にあった。

 メキシコ危機のもう1つの理由は、ドル建ての短期の債務が多かったことである。

 

 

 

  

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