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(2)経済的統合

政治的統合への道が遠のくとき、舞台はいつも経済的統合に照明をあびせる。1957年3月、仏、独、伊、ベネルックス3国は、ローマ条約に調印し、翌58年EEC(欧州経済共同体)、EURATOM(欧州原子力共同体)が発足した。

 この経済的続合の流れは、比較的順調であった。域内関税、域内数量制限の撤廃は、当初の予定を1年半も早めて、1968年7月に達成された。同時に域外共通関税制度が導入され、名実ともに関税同盟が成立した。

 当時ヨーロッパでは、工業製品の貿易自由化は西ドイツの利益、農産品、農産加工品に対する市場の保証はフランスの利益と考えられていた。従って、共通関税制度(関税同盟)と共通農業政策は、共通市場形成の2つの大きな柱であった。

 また「ローマ条約」により設立されたEIB(欧州投資銀行)は、ヨーロッパ大陸の経済格差縮小という役割を着実に果たしていった。

 経済的統合の流れは、次第に「モノ」から「カネ」へと及んでいった。日本が2001年までに進めようとしている「金融システム改草一日本版ビック・バン」は、ヨーロッパでは1988年の「資本取引の自由化指令」に基づき、1990年7月から実施されている。

(3)政治的統合・経済通貨統合・マーストリヒト条約

マーストリヒト条約では、「ヨーロッパ統合に新たな段階を刻し」「EU」の建設を行うと語った。単一通貨「ユーロ(EUR0)」の導入を柱とする「経済通貨統合」を現実のものとするとともに、進展の遅れていた「政治統合」の目標を掲げた。

 マーストリヒト条約の政治統合と経済通貨統合をクリスマス・ツリーに見立てると、ツリーの幹は通貨統合である。政治統合についていえば、各国首脳の関心、共通外交・防衛政策、欧州市民権、移民政策などが、クリスマス・ツリーのお飾り、星や月、サンタクロースという形で掲げられている。

 EUは1つの中央銀行(European Central Bank; ECB)を設立し、一元的に金融政策を遂行する体制を整えている。5ユー口から500ユーロまで7種類の紙幣のデザインも決まり、1998年3月頃に参加国が決まるとされている。参加国は、統一基準(コンパージェンス・クライテリア)をクリアーしなければなら

 

 

 

  

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