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5.APECはWTO自由化へ貢献

APECの自発的自由化の開始のメッセージは、マニラ会議から2週間後に同じASEAN内でシンガポールで開かれたWT0閣僚会議に伝えられた。それが他のWTO加盟国、特にEU諸国に同様な自由化努力を促し、WT0全体としての自由化に貢献することを期待してである・このAPECの自由化とWTO自由化をともに進めるという戦略は、大阪行動指針の「多角的自由化との整合性」原則にも合致する。APECの「オープン・リージョナリズム」(open regionalism)はグローバリズムと矛盾することはない。

日本で議論する場合、グローバリズムとリージョナリズムは対立関係にはない。むしろ日本国内に根強く残存する「内向きのナショナリズム」の方に危倶を感ずる。日本企業は活発に海外進出したが、外国企業や外国人を日本国内に受け入れる方ではいたって消極的である。法律や行政指導で抑制していた時代もあった。今日ではそれを廃止しつつあるが、なお有形・無形で残存しているとは多くの外国エコノミストの批判である。日本の高地価、高コストのインフラ、各種規制を嫌って、外国企業が入って来ないだけでなく、多くの日本企業が生産拠点を海外に移転した。産業の空洞化である。このような内向き姿勢では日本経済の再活性化はおぼつかない。リージョナリズムの危険を叫ぶより、内向きのナショナリズムの打破を叫びたい。オープン・リージョナリズムのAPECに真剣に取り組むことこそ、内向きのナショナリズムを突き崩す道である。グローバリストよ。理念だけのグローバリズムを捨てて、現実のリージョナリズムを正しく理解せよ。そして内向きのナショナリズムの克服に加われ。

 

 

 

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