3.リージョナリズムの現実的アプローチ
もちろん現実のリージョナリズムの推進者たちは域内貿易拡大、そしてそれが世界大の貿易拡大にもつながることを表明している。1985年ECが単一市場計画を発表しただけで国境を越えての企業の吸収合併熱が高まったとき、外部からは「ヨーロッパ要塞」という批判が言われたが、ブラッセルのEC官僚たちはこれを聞いて「自分たちはヨーロツパの弱小企業・産業を温存するめに働いているわけではない」と怒ったものである。現実に域外を除外することで域内活性化を図ろうとする地域統合グループはない。ただNAFTAの厳しい原産地規則(rules
of origin)のように特定分野の域外企業を排除する結果になる例は生じており、このような動きを監視して、警告・抗議し、制止することは続けなければならない。
なぜリージョナリズムの動きが活発化したのか。これは「企業活動のグローバル化」への「各国政府の対応」である。20世紀の後半に入って、情報通信・輸送技術が飛躍的に進歩して、企業が自国市場だけでなく国境を越えて世界大で生産・流通活動を繰り広げる、いわゆるボーダーレス化傾向が頭著になっている。この傾向は、自国市場ぺ一スでは国際競争力を維持、存続できなくなって、大企業はもちろん、中小企業にまで及んできている。企業側でのこの動きに対して、各国政府は自国内の経済成長を維持し、雇用と所得の増大をはかるためには国内企業だけでなく、外国企業も積極的に取り込んでいかなければならない。それを妨げるような貿易投資障壁を取り除き、企業活動を規制する制度・ルールの簡素化・共通化を実施しなければ、外国企業が来ないだけでなく、自国企業もよりよい政策環境の国へ出て行ってしまう。しかし世界大で自由化・規制緩和・制度ルールの共通化に合意するには時間がかかるので、てっとり早く、実現可能なリージョナリズムに走るのである。
4.APECはオープン・リージョナリズム
アジア太平洋もこの現実的なリージョナリズムの動きの例外ではあり得ない。多分に「ヨーロッパ熱」に刺激されて、1989年に豪州の提唱でAPECが発足し、当初は消極