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 行動段階に進める中心となった。APECもリージョナリズムの一種ではないか。これはグローバリズムと矛盾しないのか。

 

2.リージョナリズムはどちらにも働く

 

 国際経済学の教科書では地域経済統合は自由貿易地域(Free Trade Area ; FTA)、関税同盟(Custom Union;Cu)、共同市場、経済統合、完全経済統合の5段階に分類される。NAFTAやAFTA,MERCOSURはいずれも第1段階の自由貿易地域で、域内での関税は相互に撤廃するが、対域外では各自の関税を維持する。EUは1958年に発足以来、域内関税撤廃、域外共通関税設定を経て、1992年にメンバー国間の280余の物理的・技術的・財政的障壁を撤廃して単一市場(single market)を達成し、マーストリヒト条約を採択して最終段階の通貨統合へ向かっている。自由貿易地域には域内だけで関税を撤廃する結果、域内の貿易が活発化する「貿易創出(trade creation)効果」と域外との貿易を阻害する「貿易転換(trade diversion)効果」がある。これがメンバー以外からは差別だと批判される。しかし創出効果で域内の経済発展が促進されて域外輸入箒要も拡大することも見込めるわけで、これが転換効果を上回ると域外国にもネツトの貿易拡大のメリットが出る。理論的には両方考えられるわけである。

 実証研究では域内貿易拡大については証明されているが、ネットの域外差別効果については明確に示されていない。制度的にはGATTでは第1条の無差別最恵国待遇を大原則としているが、第24条で地域大での自由化が世界大での自由化推進につながることを期待して、自由貿易地域等を第1条の例外として認めている。ただその条件として付けられた「実質的にすべての商品・サービス貿易を含み」「自由化期限を明言し」「メンバー外への障壁を高めない」等は曖昧で、EUもNAFTAその他の自由貿易地域もこれらの条件に照らして受容されも拒否されもしていない。むしろ個々の地域貿易協定が実際面で差別化を増さないように監視する方が有効であり、現実的である。

 

 

 

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