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I:何が問題なのか:問題意識の所在と枠組み

1.何が問題なのか

 1990年代に入ってからの顕著な傾向として、世界の各地でリージョナリズムが活発化していることが挙げられる。EC(欧州共同体)は今や15カ国のメンバーを擁し、通価統合まで進むEU(欧州連合)になったし、米加自由貿易協定はメキシコを入れてNAFTA(北米自由貿易協定)やラテンアメリカのMERCOSUR(メルコスール)、さらにアフリカ、中近東、南アジアの途上国でも地域統合化の動きが活発で、UNCTADのリストでは世界で35の地域統合グループが発足している。もっとも地域統合の程度はさまざまだが、グループ内での貿易・投資障壁の削減・撤廃から始め、関連国内制度やルール、手続きの共通化(円滑化)政策調整まで予定しているものも少なくない。これが地域拡大、近隣国同士で自由化や円滑化を進めるリージョナリズムの活発化である。
 他方グローバリズムは、世界代で自由化や協力を強化する動きはあるが、リージョナリズムに比べて弱く、遅いことは否めない。GATTのウルグアイ・ラウンド交渉は4年の予定を7年かかって終了した。サービスや知的所有権まで含めたWTO (世界貿易機関)に発展拡大されたが、昨年末シンガポールで開かれた第1回WTO閣僚会議での主要な成果はウルグアイ・ラウンド合意の完全実施の申し合せであった。このように地域統合化だけが進行しても、世界経済の発展と安定は大丈夫なのか。リージョナリズムを抑制し、グローバリズムを督励しなくてよいのか。
 以上は世界中で聴かれる一般的な問いかけである。理論思考のエコノミストの間で多く、特に日本では同意見の人が多い。日本はこれまでいかなる地域協力グループにも属さず、国連・GATT中心のグローバリズムが日本政府の伝統的な公式見解だったからである。しかし日本も1989年からAPEC(アジア太平洋経済協力)に参加し、1995年には大阪で首脳会議・閣僚会議を主催し、大坂行動指針をまとめて、APECを

 

 

 

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