日本財団 図書館


(3)今後の方向性
(1)島民自身による取り組み
 今後、玄海諸島における廃棄物等の収集・運搬の効率化を図るために、島民で実施可能あるいは必要な取り組みとして、7地区が「漂着ゴミ等の島内一斉清掃」をあげている。また、6地区が使用済み自動車や廃家電などの「共同処理」をあげている。
 漁業関係者が実施可能あるいは必要な取り組みとして、4地区で「共同処理」をあげている。また、「漂着ゴミ等の島内一斉清掃」「勉強会の実施」を各3地区があげている。
 
図5-2-6  島民が取り組み可能な廃棄物等の輸送効率化の取り組み(複数回答、N=9・駐在員)
 
図5-2-7  漁業関係者が取り組み可能な廃棄物等の輸送効率化の取り組み(複数回答、N=5・漁協)
 
 漂着ゴミの量は多く、手間賃程度の負担であれば、支払ってでも回収作業をしてほしいという意見がみられる。共同輸送については、使用済み自動車の共同輸送は駐在員が取りまとめを行う形で実施が可能である。また、同じ組合に所属する漁協間では連携が取られており、漁業関連廃棄物の海上輸送にあたっては、島間で声を掛けあって共同輸送することも可能である。ただし、これは漁協による経費処理が一括であるため可能となっている。
 一般廃棄物の島内収集や放置された廃棄物等の収集は、委託費が支払われるならば実施可能との意見がある。
 このほか、古紙等は島内で再利用することで廃棄物の排出量削減が可能となるのではないかとの意見がある。
 
<ヒアリング・アンケート意見>
○多少の島民負担があっても、漂着ゴミの回収は必要
・漂着ゴミの回収回数は、年に2回では本当は足らない。年4回くらい行った方がよい。その場合は、手間賃など、状況によっては島民負担もやむを得ないだろう。(馬渡島)
 
○共同輸送
・今後、島内で使用済自動車を排出する際はとりまとめを行い、排出者がきちんとわかるようにしたいと考えている。とりまとめの役割は駐在員が担うことになるだろう。(加唐島)
・同じ鎮西組合である松島や加唐島については、島内で漁網等の産業廃棄物の収集をした際には、声をかけて必要があれば回って回収する。連絡もこまめに行っている。(馬渡島漁協)
 
○委託業務による島内収集や放置された廃棄物等の収集
・島内収集は行政から民間に委託することも可能だが、島民も仕事にならなければやる者はいない。(高島)
・漁業の産業廃棄物は結構多く排出される。持ち主がわからないものもある。一定の経費が支給されるならば、漁協で玄海諸島のリサイクル財の収集・運搬を行いたい。(馬渡島漁協)
 
○島内での一部処理
・廃棄物やリサイクル財を本土へ海上輸送しているが、島内で処理できると良い。例えば、古紙は資源化できると良い。豊島や直島のように、廃棄物処理でも集客に結びつけられると良い。(高島)
 
(2)島間の連携
 玄海諸島では定期航路も独立していることから、島間の連携は難しいという意見が強い。一方で、旧市町村単位では廃家電や粗大ゴミ等の収集日を連携したり、排出量の削減を図ることで、島民が行政コストの削減を支援し、官民共同で離島振興に望む態勢が必要であると指摘されている。また、観光客やボランティア等の島外参加者との交流を兼ねた清掃活動の実施が必要との意見があげられている。
 
<ヒアリング・アンケート意見>
○島間連携は困難
連携する必要はないと思う。島々では状況がちがう。(高島)
・ゴミの問題で、各島の駐在員が情報交換することは特にない。(加唐島)
・年に1回、離島振興に関する会議があり、駐在員が集まる。しかし、島同士で何かやっていこうという態勢はない。島内3地区では一斉回収などを行っている。(馬渡島)
 
○島外の人との交流を兼ねた清掃活動(漂着ゴミの回収等)の実施
・玄海諸島(唐津市七島)一斉に行う。(ラブアース等の時)その時ボランティア等の方々(島外)に一人一袋渡し回収袋記念品(島の物産品)を渡し交流をしたい。経費を行政から補助してほしい。(神集島)
観光客を交えて、全島一斉に漂着ごみの回収を行い、イベントを同時開催する等の活動が必要と思います。(馬渡島二タ松地区)
 
○島民協力・島間連携による輸送効率化の実現(行政コストの削減)
・廃棄物の処理は行政の支援が必要である。排出する側もコンパクトに出すことで回収しやすいよう行政に配慮をする。そうすれば、受ける行政も気持ちをくみ取り、連携して皆がその方向に考えるようになる。
・例えば、廃棄物の回収頻度を減らせば、その分行政の人件費は減らすことができる。自分の島だけではなく、他の島も含め、広い視野をもって考えることが必要である。
・高島と神集島で協働して廃家電を共同輸送することにし、高島が○台、神集島が○台たまったら、行政に連絡して同一日に取りに来てもらうことにすれば、パッカー車1台で済む。また、小川島、馬渡島、加唐島でも3回輸送するところを2回で回収できるようにすれば、その分のコストを他にまわすことができる。島全体で30〜40万円を浮かすことができれば、その分他の事業にコストを回してもらうこともできよう。自分たちも行動する。自分が最初に行動する姿勢が必要。(神集島)
 
(3)船社や行政への要望
 現在、定期航路で一般廃棄物を輸送しているケースは小川島(向島は島民の手荷物として持参)のみだが、他の島についても定期船で廃棄物を輸送する方が効率的ではないかと指摘されている。また、行政には漂着ゴミの発生防止に向けた取り組みや清掃活動への一層の支援が求められている。
 このほか、漁協を中心に複数の島から廃棄物等を収集する回収船の運航、大型の廃棄物等を一時保管するスペースの確保や廃家電の輸送に対する離島支援などが求められている。
 
<ヒアリング・アンケート意見>
○定期船等での廃棄物輸送
・一般廃棄物の収集を貨物船に頼らず、定期船にクレーンを付けて輸送できると良い。(神集島)
・船舶の改造、廃棄物収集・運搬にかかる免許取得(海運事業者)(馬渡島漁協)
 
○漂着ゴミの防止・回収に向けた行政支援
・行政に現場を見てもらい、ゴミがないよう指導してもらいたい。(加唐島漁協)
・可燃物、不燃物と大別しその収集処理に行政の方にも力をもっと入れて欲しい。高齢化が進み磯へ行けなくて若い力が少なく活動が大変。
・大型発泡スチロール等は袋に小さく切らないといけないので袋に入れずに大型のものは運ぶようにするともっと処理が簡単になるのではないかと思います。(加唐島漁協)
 
○その他
・複数の島間をまわる回収船の運航。(向島漁協ほか)
・島で処理できるものは処理して少なくできる小さな処理施設が出来ないか?(向島漁協)
・大型のものを置く場所がない。(加唐島漁協)
・家電等のリサイクル(4品目)についてリサイクル料、また船賃が高く、そのため不法投棄がおこなわれるのではないか?安い料金で処理できるよう希望する。(馬渡島)
 
(4)その他
 その他、定期航路の船舶や運航ダイヤ、施設等の整備、漁業支援のあり方などについて、以下のような意見があげられている。
<アンケート意見>
・漁業者が海上タクシー等輸送業をするべきではない。事業者優先の産業育成がのぞましい。(高島)
・島内、及び本土側の待合所、駐車場の完備を望む。輸送時間等の増便、変更と見直しを要する。(神集島)
・定期航路の船を大型化し、少々の強風でも安心して乗れる船が就航してほしい。(馬渡島)
・定期航路の週末等の時間変更等、金曜日に仕事を終え島外へ出ることができるよう、夕方の便をつくってほしい。(馬渡島漁協)
・複数の島間をまわる航路等、人の流れを活発化させる対策が急務(小川島漁協)


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION