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(2)廃棄物等の収集・運搬に関連する取組状況
 玄海諸島では(1)であげた問題点を解決するために、以下のような取り組みが行われている。
 
(1)共同輸送の実施
 神集島、加唐島、馬渡島でこれまでに、島民でチャーター船を手配して使用済み自動車の一斉撤去(共同輸送)を行っている。また、小川島や向島では漁業関連廃棄物の共同輸送が年数回行われている。輸送方法は、小川島ではチャーター船を手配、向島では漁船で輸送し、事業者には本土の港引き渡しとしている。
 
表5-2-2 共同輸送の取組状況
使用済み自動車の共同輸送 漁業関連廃棄物の共同輸送
高島 2005年、数人で地金業者の大型トラックに積載し、処理してもらった。 不明
神集島 2000年と2003年にチャーター船を手配し各々10名ぐらいで輸送した。 実績無し
小川島 実績無し。 漂着ゴミを年1、2回チャーター船で輸送。また、年数回リサイクル財等を貨物船でトラックに積み込み、共同輸送。
加唐島 2003年に島民数人でチャーター船を手配し、二輪車を含めて本土へ輸送した。 実績無し
松島 実績無し。 不明
馬渡島 2005年以前に全島民で全ての廃車を本土へ輸送した。 実績無し
向島 実績無し。 年2回ほど、漁協でとりまとめて漁船で輸送。
備考)不明:アンケート未回答または漁協無し
資料)本調査アンケート結果
 
(2)廃棄物の排出量の削減
 廃棄物の排出量を削減するため、漂流物や漁網等の再利用は各島で行われている。また、分別収集に対する島民の理解を深めるために、駐在員が中心となり説明等がたびたび行われている。加唐島、松島、馬渡島では、可燃ゴミを本土へ輸送することになった際に、各家庭でコンポスト機器を導入したが、堆肥の利用用途が少なく手間がかかるためあまり定着しなかった経緯がある。
 
<アンケート結果(島内リサイクルの取り組み状況)>
漂流物のウキや木材を案内板等に再利用、また、漁網も畑の囲いとして使用。(神集島)
漁網等は台風時の屋根のカワラ止めやカラスよけ等に再使用している。(加唐島)
・漁網等を田畑で野鳥から守る為に使用している(馬渡島)
・漁網を一部畑などに防風ネットがわり、又鳥よけに使用している。(向島)
ガゼ(ウニ)ガラを肥料として畑に入れている。(向島)
 
<ヒアリング意見>
○分別収集の徹底など廃棄物の排出削減に向けた取り組み
・リサイクル処理の方法は以前に比べて複雑になっているので、わかりにくい部分も多い。地区の集会では、分別・処理方法の説明はたいてい行っている。(馬渡島)
・ゴミを少なくするよう、平成10〜11年頃(島内でゴミの焼却ができなくなった頃)に各家庭にコンポスト機器を購入させたが、結局ゴミとして排出する方が手間がかからず、また堆肥をつくっても農業をしないため、活用先が無く、使用されていない。(馬渡島)
・リサイクル財の輸送は嵩が高いので、島内に処理機械などあればよいが、人口も減っており、それは難しいだろう。ただ、これ以上ゴミは増える予定はないだろう。(馬渡島)
 
(3)不法投棄の防止に向けた取り組み
 不法投棄の防止に向けて、神集島では駐在員が率先的に行動し、手続きや島内運搬などを支援することで行動を促し、島民理解の向上に寄与してきた。また、高島では観光客が増加し、観光客の目が行くところでは不法投棄が減少してきているという。
 各島での廃棄物等の問題解決に資する取り組み状況をみると、多くの地域で不法投棄防止を念頭に置いているとみられるパトロール活動や島民同士の呼びかけ等が行われている。
 また、漁協では清掃活動が行われており、向島では清掃活動の拡充を検討している。
 
<ヒアリング・アンケート意見>
○率先行動による島民理解の促進
・不法投棄は罰金対象という理解が広まり、少し浸透してきた。
・これは、区長が率先して自ら清掃活動を行い、業者へ引き渡しを行ってきたことも影響している。自分が動けば、やがて高齢者が協力してくれるようになった。高齢者から処理の依頼があり、区長が家まで取りに行ってやり、シールを貼って、出してあげる。1つずつ言って歩き、徐々に理解をしてもらった。取りに来てくれ、共同輸送で持っていってもらえるならば、費用負担も承知してくれる。ここまで3〜4年がかかった。(神集島)
 
○観光客にみられる場所は不法投棄減少
・観光客が一緒に取り組むことはない。持ちかけたら、参加してくれる人はいる。高島を訪れる観光客はお参りが目的の人が多い。観光客が増えたからといって、このような人たちは島を汚したりしない。また、島側も表(観光客がみるあたり)部分は不法投棄が減っている。(高島)
 
表5-2-3 現状の問題解決に向けた取り組み(駐在員アンケート)
取組状況
高島 パトロール活動・草刈りを実施。
神集島 パトロールはしていませんが、おおかたの分は投棄者は皆が知っていますが、争いになるので口に出さずにいる、のが現状です。
小川島 回答なし
加唐島 不法投棄をさせない為にパトロールを行っている。
松島 不法投棄禁止の呼びかけ
馬渡島 宮ノ本区 特にパトロール等は行っていませんが、釣り人等のポイ捨てが多く漁協婦人部等による監視を続けています。
二タ松地区 島民が注意している
野中地区 回答なし
向島 回答なし
 
表5-2-4 現状の問題解決に向けた取り組み(漁協アンケート)
取組状況
馬渡島 海岸清掃を年数回行っている。
神集島
向島 磯そうじを年2回から増やそうと考えており、行政と話し合いを行っている。
加唐島 島のボランティア団体でローテーションで週1回清掃作業をしている。
小川島 巡視や啓発的な海岸清掃の実施
 
(4)島間の連携に向けた取り組み
 玄海諸島では、島間の連携を高め、共通の課題解決を図っていくことを目的として、2001年に「NPO法人レインボー七つの島連絡会議」が設立された。活動の一環として、隣の島の清掃活動への参加などが行われている。
 しかし、島民の参加者がなかなか増えず、島内に活動が浸透していかない点が課題となっている。今後は、島づくり事業の一環として行政と連携しながら、街灯整備やイベントの実施等が検討されている。
 また、現在、唐津市では玄海諸島を対象に島づくり事業が実施されており、観光振興を中心とした取り組みが進められている。
 
<ヒアリング意見>
○NPO法人設立の経緯
・いずれ唐津市に合併されることになるので、今のうちに島間連携を進めておけば、行政にアプローチしやすいし、島民意識を高めることが必要と考え、平成13年に「NPO法人レインボー七つの島連絡会議」を立ち上げた。島の課題は共通である。良いところは学び、学習しあいたいと考えた。
 
○NPOによる取組状況
・会員数は現在86人である。内訳は島民と島外が半々である。
・主な活動実績は、隣の島の清掃活動への参加や、読み聞かせの会等を実施してきた。小川島や向島で花を植えたりした。海上タクシー水星が島間を結ぶ足となったので、実施が可能となった。
 
○NPO活動の問題点
・しかし、取り組みがなかなか島民に理解されにくい。何かもらえないと動かない体質である。
・島民の会員が増えていない。ボランティアの意識が浸透していない。(高島)
 
○NPOの今後の活動
・島民の交流を主に取り組んでいく。例えば、風力発電を利用した街灯整備(小川島)、高齢者のゲートボール大会、出張美容師の仲介(昨年加唐島で実施)を検討中。
・出張美容師は、保健所から理容施設が無い場合はできないと指摘が入った。介護目的ならば理容施設がなくても対応可能だが、離島だからといって認められないという。
・島づくり事業の一環としてHPを作成した。一部行政から補助を得ているが、事務費用を捻出したい。(高島)
 
○島づくり事業
・県からの補助金で、各島もしくは7島共同で、観光振興のための事業を行っている。7島の共同事業としては、色違いのジャンパー・のぼりの製作、港の壁画などがあげられる。島ごとの事業は、加唐島では武寧王の生誕祭や、波止場の花一杯運動、椿の実の油絞り、観光パンフレットづくりなどである。(加唐島)


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