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b)島民の廃棄物処理やリサイクルに対する意識
 玄海諸島で、廃棄物排出量の削減や適切な処理を進めていくためには、島民の意識を高め、島内で連携して共同で取り組む態勢づくりが必要である。そのためには、駐在員に業務が集中し、取りまとめにかかる負担は大きくなることが見込まれ、懸念されている。
 
<ヒアリング意見>
○共同処理の取りまとめ作業
・島内でとりまとめて出してほしいというニーズがあるが、取りまとめに手間がかかるので対応できていない。とりまとめ(スケジュール・料金・連絡等)作業を誰か(業者?)が担ってくれるならば共同処理も可能だろう。本土から島まで取りに来て、費用を固定でできるならば、リサイクルを利用する人はいるだろう。(高島)
 
○島内の意識統一が必要
・島内で取り組みに理解を示さない人たちがいる。自分さえ良ければという風潮もある。これらの人にも早く理解してほしいと思う。なかなか島内の意識はまとまらない。逆に、他の島も含めて全員で決まったことで、他島のリーダーから言われたことなら従うこともある。(神集島)
 
c)漁港や海岸等の廃棄物等
 漁港や海岸部では漂着ゴミが多く、これらが景観を損ねたり、漁業への悪影響が懸念されている。各島で漂着ゴミの回収が行われているが、漂着ゴミの流れ着く場所は作業が難しい場所が多く、さらには高齢化が進み、回収作業の負担も大きく問題となっている。
 現在、漂着ゴミの回収や処理にかかる費用に対して、交付金が活用されているが、交付金が無くなった場合は、清掃回数の減少は不可避とされている。
 また、釣り客によるゴミも増えており、馬渡島では釣り客から経費を徴収している。
 
<ヒアリング・アンケート意見>
○漂着ゴミの収集にかかる負担大
・回収した漂着ゴミを島の裏側から運ぶのが非常に大変である。軽いゴミは運べても、重たいゴミは容易に運べない。(加唐島)
・海岸の漂着ゴミが一番困っている。漂着ゴミが流れ着く場所は岩場が多く、回収が難しい。漂着ゴミはアワビやサザエなど漁への影響もある。小さくちぎれたビニールは、岩場の奥に入り込んでしまう。(馬渡島)
・2〜3年前まで一斉清掃を実施していたが、60歳以上が過半数となり、作業ができなくなった。現在はラブアースデーのみ、海岸清掃を行っている。(神集島)
 
○補助金が無ければ回収頻度は減少見込み
・今後、行政からの交付金がなくなれば回収回数は減るだろうが、それによって、景観面や漁業への影響などが大きな問題になると考えられる。(加唐島)
・漁協の船を利用するが燃料費や人件費等で1回に3万円程度の経費がかかる。廃棄物がたくさん溜まってからでないと運べない。ただし、輸送費に補助は出ている。もし漂着ゴミ等は交付金が出なくなると非常に困る。年に1回(夏前の海の日か)に回数を減らすしか無いだろう。(馬渡島漁協)
・漂着ゴミの積み込みは人間の手で行う。ユニックをチャーター船で輸送すると、20万円くらいかかってしまう。粗大ゴミの回収日ならばユニックが来るので利用できるが、なかなかタイミングが合わない。(漁協)
 
○釣り客のゴミの放置
・釣り客が置いていくゴミも結構多い。ゴミを捨てる用のゴミ箱は置いてあるが、島の人がボランティアで掃除している。(加唐島)
・釣り客は、去年から処理費用として200円を船着き場で徴収している。マナーの悪い人がおり、弁当がらなどを置いていく。釣り客は今後も増加見込みである。(馬渡島)
 
○島民の不法投棄もみられる
・漁業者の使用済のアミ、漁具の散乱(高島)
・島内の人の不法投棄も割に多い(神集島)
 
図5-2-4 漁港や海岸における廃棄物等の現状(複数回答)
 
d)廃船処理
 島内で利用されている船舶はFRP船が大部分となっており、今後は適切なリサイクルを行うことが必要となる。廃船処理に関する問題点として、駐在員、漁協とも「収集運搬費用が高い」点が多く指摘されている。駐在員からは、「処理方法が分からない」も同数の地区であげられている。また、現在は不適切な処理が行われている点への対応や、放置されて名義不明となっている廃船の処理が課題となっている。
 また、船舶用バッテリーは3年に1回程度交換が必要である。島民は自前で交換を行っているが、これらのバッテリーが適切に処理されず、放置されているケースがみられる。
 
図5-2-5 廃船処理の問題点(複数回答)
 
<ヒアリング・アンケート意見>
○廃船処理の問題点
・港に3隻程度、処分しなくてはいけない船があげてある。このうち、名義のわからないものが2隻ある。これを誰が費用負担するかが問題。(馬渡島漁協)
・不適切な処理がみられる。(神集島)
・近隣に処理場が必要。(馬渡島・加唐島漁協)
 
○船舶用バッテリー処理の問題点
・船舶用バッテリーが船揚場周辺に放置されている。業者(船舶用電気店)に引き取ってほしい。(加唐島)
・以前は船のバッテリーを海洋投棄していた。現在は、海洋投棄はしていないようだが、島内に誰のものか分からない船舶用バッテリーが置いてあり、処理に困っている。バッテリーは大きな船は10個くらい、小さな船だと2個くらい。交換は3年に1回程度。(馬渡島)
 
 
e)欠航による廃棄物等の収集停止
 一般廃棄物は定期的に回収が行われているが、天候による欠航のために、回収が停止するケースが年数回発生する。また、2006年11月に収集委託業者の船舶が故障し、1週間程度の欠航が発生したため、ステーションの収容量を超えたケースがみられた。このように、通常の収集船が欠航した場合の対応として、代替船の確保や欠航期間に応じた一時保管の対応などが必要とされている。
 
<ヒアリング意見>
○天候による停止
・時化によって収集船が欠航する場合が年に何回かある。すでにステーションにはゴミを出している。特に夏場は(臭いなどもあり)対応に困る。(高島)
沖は時化ていても、高島周辺は船が出せる場合もある。しかし、一般漁船では廃棄物の収集運搬の許可を取得していないので、運搬できない。(高島)
・一般家庭のゴミ等については定期的収集により不都合はありませんが、唯強風等の為収集船の欠航が有り保管場所に困ることあり。(馬渡島)
 
○委託処理事業者の船舶故障による収集停止
・ここ1週間ほど、収集船の故障のためにゴミの収集が中断している。島内にゴミが溜まるため、何より船が故障しないように、また故障したときは代船ができるような体制を整えてもらいたい。(加唐島)
・現在、船の故障によって、ここ4〜5回くらいの島のゴミの回収が中断されている。このように長期間収集がストップすることは初めてである。すでに島内のステーションはいっぱいになっており、各家庭でストックしている。まだ、回収の目処が立たず困っている。(馬渡島)
 
(2)島ごとの問題点
 島ごとの問題点として、漁港やインフラ整備に関する点があげられている。高島や神集島の漁港は浅く、干満の潮位によって収集時間が異なる点が課題となっている。また、馬渡島では、一般廃棄物の収集時に発着場所前のスペースが狭い点があげられている。
 
<ヒアリング意見>
○岸壁の水深が浅い<高島・神集島>
・春先や秋口などは、潮が引いた時に浅くなってしまうため、船を付けることができない。潮汐表をみながら、毎日収集時間が変わる。特に、し尿収集をしてもらう家では、収集時に誰かが家にいなければならないため、収集時間の事前連絡が必要となる。連絡係は区長である。(高島)
・貨物船は潮の干満によって岸壁の水深が変わるため、収集時刻が変動して困る。神集島は本土に近すぎたために、(橋の建設を議論の焦点としてきたため)岸壁整備が遅れた。(神集島)
 
○岸壁前のスペースが狭い<馬渡島>
・港利用に関しては、収集運搬トラックが着いた際に、その前の道路が狭いため、トラックが通る間待たなければならない。(漁協)


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