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5.3.3.5 ケースの評価
 神戸少年の町版CSPを実施した後のケースを評価(複数回答あり)してもらったところ、講座を終了した群(中断・実施中といったものを除いたもの)の81.5%が受講した保護者に良い変化があったと報告している(表5-11)。
 
表5-11 ケース評価
よい変化があった 88ケース(54.3%)
中断 34ケース(21.0%)
 1回で中断
 2回で中断
 3回で中断
 4回で中断
 5回で中断
 不明
7ケース
8ケース
10ケース
5ケース
2ケース
2ケース
実施中 20ケース(12.3%)
不変 7ケース(4.3%)
不明 6ケース(3.7%)
悪い変化 4ケース(2.5%)
担当変更 3ケース(1.9%)
合計 162ケース
 
5.3.3.6 ケースの実施(都道府県別)
 ケースの実施状況を都道府県別に見てみると、一番実施数が多いのは千葉県で50ケース(30.9%)あった。続いて青森県15ケース(9.3%)、沖縄県と宮城県が12ケース(7.4%)、そして大阪府が11ケース(6.8%)という結果となった。この結果から実施しやすい県があることが分かった。傾向としては同じ県下に多くのトレーナーがいる場合、その実施が促進されるということが示された。また、これら4県ともに、トレーナー養成講座の出張講座を実施していた。
 
表5-12 ケースの実施(都道府県別)
千葉県 50ケース(30.9%)
青森県 15ケース(9.3%)
沖縄県 12ケース(7.4%)
宮城県 12ケース(7.4%)
大阪府 11ケース(6.8%)
静岡県 7ケース(4.3%)
兵庫県 7ケース(4.3%)
鳥取県 6ケース(3.7%)
北海道 6ケース(3.7%)
福岡県 6ケース(3.7%)
新潟県 5ケース(3.1%)
大分県 4ケース(2.5%)
長野県 3ケース(1.9%)
香川県 3ケース(1.9%)
愛知県 3ケース(1.9%)
岐阜県 2ケース(1.2%)
福島県 2ケース(1.2%)
山梨県 2ケース(1.2%)
京都府 1ケース(0.6%)
岡山県 1ケース(0.6%)
鹿児島県 1ケース(0.6%)
広島県 1ケース(0.6%)
山口県 1ケース(0.6%)
東京都 1ケース(0.6%)
合計 162
 
5.3.3.7 実施できた理由と実施できない理由
 上記では、実施状況についてみてきたが、では、実施に影響を与える要因は何であろうか。この要因を分析するために、CSPを「実施できた」、もしくは「実施できなかった」理由を尋ねた。
 実施できた理由としては、「実施することへの組織のコンセンサス」「関係機関の理解」「施設内の理解」「施設や機関で講座を行う体制の有無」「きっかけの有無」「必要性のある事例の有無」「できそうな親の有無」「動機付けの有無」「時間の有無」(表5-13)などがあがり、実施できなかった理由としては、「実施することへの組織のコンセンサス」「施設内の理解」「きっかけの有無」「必要性のある事例の有無」「できそうな親の有無」「動機付けの有無」「トレーナーの自信の有無」「時間の有無」(表5-14)などがあがった。全体的には、実施できた理由と実施できなかった理由の両者において、同じような傾向は見られるが、法的なものや自信といったものについては差が見られた。法的なものを実施できる理由に選んだものはなく、法的な基盤整備の必要性を多くの専門職が感じていること、またトレーナーの自信については「自信がある」と答えたのが4名(5.6%)に対し、「自信がないので出来なかった」と答えたのは40名(33.1%)となった。
 ここではさらに両者の差を統計的に明らかにするために、クロス集計、カイ二乗検定を行った。その結果、「実施することへの組織のコンセンサス」「関係機関の理解」「必要性のある事例の有無」「できそうな親の有無」「動機付けの有無」「トレーナーの自信の有無」「時間の有無」の7項目において統計的有意差(5%水準)が確認された(表5-13・表5-14に※で表記)。実施を促進、または阻害する要因としては、野口(2005)が2005年度に行った調査と同じく、「ケースの動機付けの問題」「組織的な問題」「トレーナーの自信の有無」があがったと言える。
 
5.3.3.8 実施と虐待ケースヘの対応における自信度との関連
 神戸少年の町版CSPの実施にはトレーナーの自信の有無が関連していることが上でもあげられたが、それを検証するために、実施と虐待ケースヘの対応における自信度との関連を調べた。ここでは、虐待ケースヘの対応における自信度について、「あなたは虐待ケースにどれほどうまく対応ができると思いますか。『十分に自信がある』を100%、『全く自信がない』を0%としたとき、今の自信の程度はおよそ何%くらいですか」という質問を用いて尋ねた。その結果、最小値は0、最大値は90に分布した。平均値53.4、中央値51.0、標準偏差18.6になった。次に、自信度と実施度との関係を調べるため、実施できた群とできなかった群にデータを二分し、その2群の点数を箱ひげ図(図5-1)にプロットしたものを比較した(図5-1)。両者には平均値(実施できた群55.1点、実施できなかった群50.8点)で差がみられたものの、一元配置の分散分析では統計的に有意とはならなかった(F値1.108、有意水準.294)。
 
表5-13 実施できた理由
実施できた理由で○を付けた回答者数(n=72)
できそうな親の有無※ 49名(68.1%)
実施することへの組織のコンセンサス※ 44名(61.1%)
必要性のある事例の有無※ 38名(52.8%)
動機付けの有無※ 29名(40.3%)
施設内の理解 21名(29.2%)
きっかけの有無 18名(25.0%)
施設や機関で講座を行う体制の有無 17名(23.6%)
施設や機関で講座を行う発想の有無 15名(20.8%)
関係機関の理解※ 13名(18.1%)
時間の有無※ 13名(18.1%)
CSPに替わるプログラムの有無 8名(11.1%)
トレーナーの自信の有無※ 6名(8.3%)
CSPに対するトレーナー自身の好き嫌い 4名(5.6%)
前例の有無 3名(4.2%)
法的な強制力の問題 0名(0%)
法的な基礎整備の不十分さ 0名(0%)
※はCSP実施とのクロス集計のカイ二乗検定の結果、5%水準の有意差が確認された項目
 
表5-14 実施できなかった理由
実施できない理由で○を付けた回答者数(n=121)
できそうな親の有無※ 42名(34.7%)
時間の有無※ 41名(33.9%)
トレーナーの自信の有無※ 40名(33.1%)
施設や機関で講座を行う体制の有無 34名(28.1%)
きっかけの有無 33名(27.3%)
必要性のある事例の有無※ 24名(19.8%)
施設内の理解 23名(19.0%)
実施することへの組織のコンセンサス※ 21名(17.4%)
動機付けの有無※ 16名(13.2%)
施設や機関で講座を行う発想の有無 13名(10.7%)
関係機関の理解※ 8名(6.6%)
前例の有無 6名(5.0%)
法的な強制力の問題 6名(5.0%)
法的な基礎整備の不十分さ 4名(3.3%)
CSPに対するトレーナー自身の好き嫌い 2名(1.7%)
CSPに替わるプログラムの有無 1名(0.8%)
※はCSP実施とのクロス集計のカイ二乗検定の結果、5%水準の有意差が確認された項目
 
図5-1 虐待ケースヘの対応における自信度と親への実施
親への実施


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