5. 神戸少年の町版コモンセンス・ペアレンティング教材の評価
2006年10月、神戸少年の町版コモンセンス・ペアレンティング教材の評価を目的に、神戸少年の町で実施してきたトレーナー養成講座を受講した専門職(276名)に対して、アンケート調査を実施した。
虐待の件数が上昇し、またその支援の難しさが深刻化する中、親支援プログラムそして専門職に対するスキルアップ研修の必要性は言われるが、実際に研修をした後の効果についての報告は少ない。そこで、CSPの実施状況を養成講座を受けた専門職に尋ねることにより、CSPの効果を確かめることを目的にアンケート調査を実施した。
2006年10月、神戸少年の町版コモンセンス・ペアレンティング教材の評価を目的に、神戸少年の町で実施してきたトレーナー養成講座を受講した専門職(276名)に対して、郵送法によるアンケート調査を実施した。
アンケートの内容は(1)属性、(2)実施状況、(3)ケース概要、(4)実施できた、もしくは実施できなかった理由、(5)虐待対応に対する自信度を尋ねる項目であった。
5.3.1 回収率
276名にアンケートを郵送し、そのうち200名より返送された(回収率72.5%)データに分析を行った。
5.3.2.1 所属機関
回答者の基本属性は表5-1の通りである。所属機関は児童相談所95名(47.5%)と多く、児童養護施設56名(28.0%)、乳児院11名(5.5%)となった。
表5-1 所属機関
児童相談所 |
95名(47.5%) |
児童養護施設 |
56名(28.0%) |
乳児院 |
11名(5.5%) |
保健所 |
7名(3.5%) |
家庭支援センター |
2名(1.0%) |
児童自立支援施設 |
4名(2.0%) |
家庭児童相談室・福祉事務所 |
4名(2.0%) |
その他 |
21名(10.5%) |
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職種では児童心理司50名(25.0%)、児童福祉司39名(19.5%)、児童指導員23名(11.5%)の順となった。
表5-2 職種
児童心理司 |
50名(25.0%) |
児童福祉司 |
39名(19.5%) |
児童指導員 |
23名(11.5%) |
保育士 |
19名(9.5%) |
家庭支援専門相談員 |
18名(9.0%) |
保健師 |
13名(6.5%) |
心理士 |
6名(3.0%) |
相談員 |
6名(3.0%) |
個別対応職員 |
4名(2.0%) |
看護師 |
2名(1.0%) |
その他 |
20名(10.0%) |
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職歴に関しては、1年目から20年以上までまんべんなく分布していた。
表5-3 職歴
1〜3年 |
41名(20.5%) |
4〜5年 |
37名(18.5%) |
6〜10年 |
34名(17%) |
11〜15年 |
31名(15.5%) |
16〜20年 |
20名(10%) |
21年以上 |
33名(16.5%) |
不明 |
4名(2%) |
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5.3.3.1 実施機関
有効回答数200名のうち、73名(36.5%)が親に対して実施したと答えた。その内訳は、児童相談所56名、児童養護施設6名、保健所2名、その他が各1名ずつであった(表5-4)。このように児童相談所の割合が76.7%と群を抜いて高い。そこで、児童相談所とそれ以外の機関で実施に差があるのかを分析するためにクロス集計し、カイ二乗検定を行った。その結果、統計的有意差(10%水準)が確認された(表5-5)。児童相談所が最もCSPを実践している機関であることが明らかとなった。
表5-4 所属と親への実施
所属 |
親への実施(はい) |
児童相談所 |
56名(76.7%) |
児童養護施設 |
6名(8.1%) |
保健所 |
2名(2.6%) |
児童自立支援施設 |
1名(1.4%) |
小児リハビリテーション施設 |
1名(1.4%) |
知的障害者更生相談所 |
1名(1.4%) |
情緒障害児治療短期施設 |
1名(1.4%) |
県健康福祉部児童家庭課虐待防止対策室 |
1名(1.4%) |
市役所 |
1名(1.4%) |
県教育相談部 |
1名(1.4%) |
県障害者支援グループ |
1名(1.4%) |
県庁福祉保健課保護係 |
1名(1.4%) |
合計 |
73名 |
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表5-5 実施に対する児相とそれ以外の機関とのクロス集計
|
親への実施 |
合計 |
はい |
いいえ |
児童相談所 |
56名(76.7%) |
39名(30.7%) |
95名 |
児童相談所以外 |
17名(23.3%) |
88名(69.3%) |
105名 |
合計 |
73名 |
127名 |
200名 |
|
実施ケース数と実施者数を見ると表5-6のようになり、1ケースを実施したものが39名(53.4%)と多く、3ケースまでの実施が全体の84.9%となった。その機関の通常の業務としての実施というよりも、試しに行ってみるといったパイロット的な実施になっているようだ。
表5-6 親への実施ケース数と実施者数
ケース数 |
実施者数 |
1ケース |
39名(53.4%) |
2ケース |
13名(17.8%) |
3ケース |
10名(13.7%) |
4ケース |
7名(9.6%) |
5ケース |
1名(1.4%) |
6ケース |
1名(1.4%) |
8ケース |
1名(1.4%) |
20ケース |
1名(1.4%) |
合計 |
73名 |
|
実施されたケースの概容(主訴)は表5-7の通りである。総数としては虐待を主訴とするケースが最も多く、虐待の種類が不明なものを除けば、身体的虐待のケースが多かった。神戸少年の町版CSPはより身体的虐待への対応を意識した内容にしたが、実施ケースでもその特徴が明らかとなった。虐待以外のケースを見てみても、育児不安9ケース(5.6%)、問題行動・性格行動9ケース(5.6%)、しつけ6ケース(3.7%)と虐待のグレーゾーンに位置する群への実施である。このことから神戸少年の町版CSPが虐待対応へのプログラムとして活用されているのが示された。
実施対象者をみる。児童の母に対する実践が91ケース(56.2%)、両親に対する実践が(養父も含めると)39ケース(24.1%)となった(表5-8)。割合的に見れば、今回の調査における神戸少年の町版CSPの実践は主に母に対してなされているのが特徴的である。これは、虐待の加害者で一番多いのが母親であるということと、母に対してのアプローチがしやすいということもあろう。
子どもの特徴としては、男児に適応されたケース(表5-9)が多く、子どもの年齢(表5-10)については3歳〜12歳までの幼児と小学生を持つ親が多かった。
表5-7 ケースの主訴
虐待(総数) |
105ケース(64.8%) |
身体的虐待
心理的虐待
ネグレクト
性的虐待
不明(具体的記述なし) |
39ケース
4ケース
6ケース
0ケース
56ケース |
育児不安 |
9ケース(5.6%) |
問題行動・性格行動 |
9ケース(5.6%) |
しつけ |
6ケース(3.7%) |
不適切な養育 |
6ケース(3.7%) |
里子養育 |
5ケース(3.1%) |
ADHD |
5ケース(3.1%) |
教護 |
3ケース(1.9%) |
暴力 |
3ケース(1.8%) |
非行 |
3ケース(1.9%) |
健育(子育て) |
2ケース(1.2%) |
不登校 |
2ケース(1.2%) |
LD |
1ケース(0.6%) |
かんしゃく |
1ケース(0.6%) |
不明 |
2ケース(1.2%) |
合計 |
162ケース |
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表5-8 実施対象者
母 |
91ケース(56.2%) |
両親(養父も含む) |
39ケース(24.1%) |
親グループ |
13ケース(8.0%) |
里親 |
8ケース(4.9%) |
父 |
3ケース(1.9%) |
母と祖父母 |
2ケース(1.2%) |
母とその知人 |
2ケース(1.2%) |
祖母 |
1ケース(0.6%) |
継母 |
1ケース(0.6%) |
父と祖母 |
1ケース(0.6%) |
不明 |
1ケース(0.6%) |
合計 |
162ケース |
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表5-9 子どもの性別
性別 |
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男 |
82名(50.6%) |
女 |
59名(36.4%) |
男女(兄弟姉妹、グループ) |
20名(12.4%) |
不明 |
1名(0.6%) |
合計 |
162名 |
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表5-10 子どもの年齢
年齢 |
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0〜2歳 |
5名(3.1%) |
3〜6歳 |
57名(35.2%) |
7〜12歳 |
67名(41.3%) |
13歳以上 |
17名(10.5%) |
不明 |
16名(9.9%) |
合計 |
162名 |
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