日本財団 図書館


5.5 防汚塗料の塗装手段の開発研究
5.5.1 VOC極小型防汚塗料用塗装機の内容
(1)防汚塗料の塗装機の選定には、塗料添加物の性状が変化しても対応可能なベローズ式エアレスポンプを選定した。
 
写真5.5.1-1 ベローズ式ポンプ
 
 又、従来の塗料シリンダに対し沈殿性のある顔料の混入にも対応可能とするため、塗料通路であるベローズ内に噴流を生成させるノズルを組込み、顔料などの沈降を防止する機構に改造した。
 
(2)防汚塗料の冬期条件(5℃)での吐出テスト
 現在造船所で使用されているノズルサイズを調査し、25Cのノズルでテストを実施し塗装性に関しては何ら問題なかった。
 
(3)エアラップの効果の確認
 ラップエア圧力を0.5MPaに設定し、吐出圧力を10MPaにてラップエアの有無と、スプレイ距離を400、1000mmて付着量を測定し、ラップ効果の確認を行い、データを表5.5.1-1に示す。尚、エアラップは横風にも有効であるが、今回のテストでは検証が出来なかった。
 
表5.5.1-1
スプレイ距離(mm) ラップエア無し ラップエア有り ラップ効果
400 2256.4g 2334.1g 3.5%UP
1000 2227.6g 2286.3g 3.1%UP
 
5.5.2 VOC極小型防汚塗料用塗装機の改良
 平成17年12月の委員会後実船塗装実験を実施した。
(1)沈殿製の高い顔料が入っているため、摺動部の無いベローズ式エアレスポンプを採用すると共に、ベローズひだ部に顔料が沈降する事でベローズが破損するため、シリンダ内の塗料の流れを旋回流が発生するよう、又、洗浄時にも溶剤がベローズのひだ内に沈降する顔料を押し流す機能をもったノズルを設けている。
(2)実船塗装実験で使用したポンプを分解調査した限り、顔料の沈降は見られなかったが、実船塗装時間が短い為、長時間使用した場合の追跡調査の結果を見てからでないと改造の要否判断が判断できず今後の課題となる。
 
5.5.3 防汚塗料ブロック塗装実験
写真5.5.3-1 防汚塗料塗装面(正面より)
 
写真5.5.3-2 防汚塗料塗装面(側面より)
 
写真5.5.3-3 防汚塗料圧送ポンプ
 
写真5.5.3-4 船底平面部防汚塗料塗装
 
5.6 まとめ
(1)平成15年度より塗膜散布に関する調査を行い、造船塗装に適した散布方法の調査から始まりVOC低減型二液性塗料及び防汚塗料の開発にあわせ試作機を製作し、開発した塗料と塗装機のマッチング性について調査を行い問題点の抽出を行った。
(2)開発塗料が改良を重ねる都度、仕様の見直しを行い改良機の方向を修正しながら、改良機の仕様を決定し製作した。
(3)改良した二液塗装機と、最終仕様の二液塗料とのマッチング性について実験を行い、圧送圧力を40MPa、加温温度は70℃あれば、操作性の問題は残るものの開発された防食塗料、防汚塗料を実船塗装に対応可能な所まで完成したと考えている。
(4)今後の問題として、実船塗装実験で、加温塗料ホースと循環用塗料ホースの接続部の循環と主剤と硬化剤の混合の為のスタティックミキサを組み込んだ混合ユニットの軽量化、スプレイ中断時の温度低下対策を含め造船所の塗装現場での作業性に対し課題が残った。
(5)VOC低減型二液性塗料において静電化を検討してきたが、塗料の高粘度化により必要圧送圧が26MPa、装置に求められる耐圧力は40MPaが必要となった。塗料経路を樹脂製で製作する静電ガンにおいては、耐圧力が確保できず断念した。
 
6. 塗装実証実験の調査
6.1 塗装実証実験の策定
6.1.1 目的
 開発されたバラストタンク用防食塗料、及び船底外板用防汚塗料の基本性能を確認する目的で、平板、及び大型船の二重底部を模したモックアップを用いた実験塗装を行った。また、本実験にて、塗料の開発と同時に開発が進められている本塗料用塗装機の性能確認も併せて実施した。
 
6.1.2 実験フロー
 開発塗料、開発塗装機に対する、平板/モックアップ実験塗装、及び実船実験塗装にいたるフローを以下に示す。
 
図6.1.2-1 実験フロー
 
6.1.3 平板/モックアップ実験塗装
(1)目的
 新開発された無溶剤型塗料(バラストタンク用防食塗料、及び船底外板用防汚塗料)の実船での試験塗装に先立ち、塗着性、乾燥性、施工性などの塗料の基本性能を確認する目的で平板、及びモックアップブロックを用いたテストを行った。
 
(2)テスト期間:平成17年10月21日(金)〜11月2日(水)
 
(3)実験塗装場所:ユニバーサル造船(株)有明事業所
 
(4)塗料及び塗装機器
スプレー機器:2台(防食塗料用及び防汚塗料用各1台/旭サナック製)
塗料:新開発防食塗料(日本ペイントマリン製)1セット
新開発防汚塗料(中国塗料製)1セット
 
(5)防食塗料(バラストタンク用)平板/モックアップ実験塗装
a. 試験板
○試験塗装は平板(200mm×200mm程度)及び大型船二重底部を模したモックアップブロック(共にショッププライマ鋼板)に対して施工した。
○テストピースは平板及び溶接ビード付平板を各々3枚ずつ準備した。(計6枚:ピース番号(1)〜(6))
○下地処理は、「無処理」、「パワーツール処理」、「ブラスト処理」の3パターンとした。(「無処理」/「パワーツール」はモックアップブロック、「無処理」/「ブラスト処理」は平板に適用した。)
○ブラスト処理/パワーツール処理それぞれにおいて、ショッププライマ健全部(スィープ)及びダメージ部(Sa2.5、St3)の処理+試験塗装を行った。
○実船適用のタールエポキシ塗料との塗り重ね性の確認(先塗り、及び後塗り)も行った。(ピース番号(2)、(5)。モックアップブロックの一部)
 
表6.1.3-1 防食塗料実験テストピース
ピース番号 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
ビード有無
表面処理※-1) 無処理 Sa2.5 Sa2.5 無処理 スィープ スィープ
タール塗装 - 先塗り 後塗り - 先塗り 後塗り
-1): 無処理:ブラスト施工無し、Sa2.5: ブラスト処理、スィープ:スィープブラスト
 
(6)防汚塗料(外板用)平板/モックアップ実験塗装
a. 試験板
○試験塗装は平板(200mm×200mm程度)及びモックアップブロック(共にショッププライマ鋼板)に対して施工した。
○平板テストピースは平板及び溶接ビード付平板を各々4枚ずつ(合計8枚)準備した。(ピース番号(7)〜(14))
○実験塗装前に下地塗膜として防錆(A/C)塗料(タールエポキシシステム(TE)及びタールフリーシステム(T-Free))を施し、その上に開発された防汚塗料を塗布した。A/C塗膜厚は250μm程度とした。
○実船塗装での懸案として、実船での本船適用防汚塗料との塗り重ね性確認の為、本来仕様防汚塗料を新防汚塗料塗膜上に塗り重ねた実験も行った。
 
表6.1.3-2 防汚塗料実験テストピース
ピース番号   (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14)
ビード有無  
A/C種類   TE系 TE系 T-Free T-Free TE系 TE系 T-Free T-Free
A/F膜厚   平底用 立上用 平底用 立上用 平底用 立上用 平底用 立上用


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION