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5.3.3 二液塗装機の緒言の設定
 塗料の混合比率、粘度等の仕様が固まっていない為、16年度は二液塗装機としてはフルスペックに近い可変式二液塗装機を製作した。塗料の仕様が最終形体になった時点で、不要な機能を削ぎ落とし、必要最小限の二液塗装機に改造を行う予定である。又塗料タンク、塗料ホース及び制御についても同様の考えである。よって、現時点で判明している塗料情報に対処できる、二液塗装機の仕様を表5.3.3-1に示す。
 
表5.3.3-1 二液塗装機の仕様
項目 設定の背景と要求項目 仕様
混合比率
(vol比)
塗料混合比率の設定 可変混合比率 3.2〜2.7:1
1分当りの
噴出量
使用ノズルは旭サナックのノズルNoで35C(噴出量=2.1λ/min/10MPa時)、ポンプの安定性を確保するため作動回数(ストローク回数)12ストローク/minを目安として算出。 2378.4mλ/min at 12st
主剤、
硬化剤
最大
噴出量
1ストローク当りの噴出量を混合比率の中央値で各シリンダのlst当りの噴出量及びシリンダの寸法を算出。 主剤
:171mλ/st(可変)
硬化剤
:60.8mλ/st(固定)
硬化剤
シリンダ
パッキン部に曲げ応力がかかるとグランドパッキンからの漏れが促進され空気中の水分と反応硬化しパッキン寿命を大幅に縮める リンク構成による近似直線上に設置することで、グランドパッキン部に曲げ応力が掛からない単動複式シリンダを採用
シリンダ径 必要噴出量、及び混合比率より算出 主剤:42.6mm 71mλ/min
硬化剤:31.7mm
63.1mλ/min
シリンダのストローク長 必要噴出量、及び混合比率より算出 主剤:
120mm〜100mm(可変)
硬化剤:
80mm(固定)
対応粘度 目標として MAX 5000mPa・s 各シートバルブにスプリングを設け高粘度対策とする。
加温システム 冬期のみ塗料ヒータにて加温する 30℃確保
 主剤:4kw
硬化剤:2kw
塗料ホース 作業性に大きく影響を与える為、過剰な加温はせず、ガンへの供給ホースは加温し、戻りホースは保温のみとする。 主剤ホース径:
3/8×25mとし加温する
硬化剤ホース径:
3/8×25mとし加温する
混合ユニット以降:
3/8×10mとする
混合装置
(スタティックミキサ)
混合不良防止機構
主剤と硬化剤の粘度差が大きいと、ポンプ切替時に、各シリンダのフート、チェックバルブがシートするまでの時間に差異が生じ。先にシートしたシリンダが先に昇圧し、もう一方のシリンダが昇圧するまでの間、先に昇圧したシリンダの液体が先行して吐出され、混合不良が発生するため、これを防止する為の装置、及び主剤と硬化剤を混合するユニットで、塗料混合ユニットはポンプ架台に取り付けるのが二液塗装機の標準的構成だが、作業終了後の洗浄時に50mのホース内の塗料もシンナと共に廃棄される。
 VOC低減という観点から見た場合、ガン内混合もしくはガン直近に混合ユニットを設ける事が廃棄塗料の低減には最も有効であるが、
(1)塗料供給ホース:2本
(2)循環の為のリターンホース:2本
(3)洗浄要溶剤ホース
の計6本の塗料ホースが必要となり、取り回しを考えると現実的でない。
 よってガンから5m程離れ、取り回しの影響が少ない場所に設置し、混合装置からガン間の廃棄される塗料の低減を図る。そのためには混合ユニットの小形も必要となる。
シート時間のバラツキ対策として、スタティックミキサに投入前に予備混合室を設ける。
 
スタティックミキサのエレメント数は、二液塗装機で現用機種に設定されている24エレメントとする。
 
5.3.4 可変二液塗装機の基本機構
(1)混合比率可変式二流体圧送装置
 エアレスシリンダを、駆動源とするエアモータと、一方を支点としたリンクを架台上に設け、支点をそのリンクの片方にエアモータの出力軸を取り付け、二つの塗料シリンダがリンク上の一点に取り付けることで、シリンダのストローク長が変化することを利用する。
 硬化剤シリンダに塗料シール用のパッキンの信頼性を確保する為、シリンダ全体に曲げモーメントがかからないよう近似直線が確保出来るリンク上に主剤シリンダと硬化剤シリンダを連結させる。
 主剤シリンダと硬化剤シリンダのストローク長を調整することで吐出量が変わり混合比率を一定範囲内で変更が可能となる。可変範囲を超えた場合は硬化剤若しくは主剤シリンダを交換することで対応する構造である。
 塗料粘度が高いため、圧力比の高いポンプが必要であり、1つのエアモータでは高いポンプレシオが確保出来ないため補助エアモータを組み込んだ。
 以上の機構を持った可変二液塗装機の基本構想を図5.3.4-1に示す。
 
図5.3.4-1 可変二液塗装機基本構想図
 
(2)混合方法
 二液塗料の混合装置は従来より採用されているスタティックミキサ方式が技術的にも確立されているため、本方式を採用するが従来以上に操作性やメンテナンス性の向上を図るとともに、洗浄時のシンナ排出量を最小限にする課題もあわせて検討する必要がある。
 また、開発塗料における試験結果を参考にガンに混合装置(スタティックミキサ)を組み込むことも考慮して機器開発を進めた。
 
5.3.5 二液塗装の主要ユニットの別法による検証
 可変二液塗装機として、小型軽量化を図るため、従来の可変方式では硬化剤シリンダに曲げ応力が掛かりグランドパッキンの寿命に問題があったので、グランドパッキン部の耐久性確保のため、シリンダに曲げ応力が掛からないようロバート式近似直線機構を採用した。小型軽量を図るためには、限界設計の必要があり、リンクに掛かる曲げ応力(最大5200kgf)を有限要素法にて最適形状を検証した。
 図は各リンクの変位量を色表示にて表した。変位量を図5.3.5-1〜5.3.5-3に示す。
 
図5.3.5-1 リンクa
 
図5.3.5-2 リンクb
 
図5.3.5-3 リンクC


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