4.2.4 塗膜物性
(1)試験方法
防汚塗料に必要な塗膜物性には、造膜性、耐海水性、乾燥性、塗膜硬度、耐盤木性が挙げられる。これらの物性について試験方法を以下に示す。
(a)造膜性
試作塗料をガラス板(200×100×2mm)に0.3ミルアプリケーターにて塗装し、直後ならびに翌日の塗膜状態を目視にて確認した。
(b)耐海水性
試作塗料を試験板(サンドブラスト鋼板300×100×2.3mm: エポキシ塗料+ビニルバインダー塗装済)に0.3ミルアプリケーターにて塗装後、40℃で5日間以上乾燥させ海水に浸漬し7日後の塗膜状態を確認した。
(c)乾燥性
試作塗料をガラス板(345×25×2mm)に0.3ミルアプリケーターにて塗装し、気温23℃、湿度50%の条件下で、ドライングレコーダーを使用し測定した。
(d)塗膜硬度(鉛筆硬度および振かん硬度計による測定)
試作塗料を冷間圧延鋼板(150×70×0.8mm)に塗装後、気温23℃湿度50%の条件下で乾燥させ以下の方法にて測定した。
(i)鉛筆硬度;JIS K5600-5-4に準拠
(ii)振かん硬度;振り子式硬度計にて測定 ASTM D-4366に準拠
(e)耐盤木性
23℃にて試験板に0.4ミルアプリケーター塗装し、以下の方法にて耐盤木性を調査した。
・塗膜表面にポリエチレンシートを置き、その上に3×3(cm2)の模擬盤木を置く。
・模擬盤木に40kgf/cm2-20分間で加圧した後の塗膜状態を目視で確認した。
・加圧は塗装後1・3・7・15日の間隔で実施した。
評価(※ 評価3が実用限界。)
(f)付着性試験
各種防食塗料上の供試塗料の付着性(クロスカット法JIS5600-5-6)を確認した。防食塗料から防汚塗料塗装までの塗装間隔は1、3、7、15、30日とし、付着性確認は、初期及び海水浸積1.5ヶ月後について実施した。
(2)試験結果
(a)一次試験
溶剤系(S-001、002)は乾燥性が不良であり、硬化促進のため各樹脂100部に硬化促進剤を各10、20、30部添加し乾燥の促進を図ったが、1日以内の硬化は得られなかったため中止し、水系WB-004も常温で7日以上と乾燥時間が非常に遅いため検討を中止した。
最終的はWB-002に絞込み配合WW-041(1)〜(3)において顔料の検討、(4)、(5)において増粘剤および水分量減量の検討を行ったがWB002使用組成はいずれも、溶剤系製品と比較し乾燥性において著しく劣った。又、耐海水性試験においても塗膜の軟化が認められた。
表4.2.4-1 一次試験結果(溶剤系と水系の比較)
原材料 |
S-001 |
S-002 |
W-002 |
W-004 |
乾燥性(指触) |
30日 |
30日 |
1日 |
7日 |
乾燥1日の耐塩水性 |
(未乾燥) |
(未乾燥) |
塗膜白化 |
海水に溶解 |
|
表4.2.4-2 溶剤系樹脂への硬化促進試験
S-001又はS-002 |
硬化促進剤 |
半硬化 |
100部 |
10部 |
2日以上 |
100部 |
20部 |
2日以上 |
100部 |
30部 |
2日 |
|
表4.2.4-3 一次試験結果(WB-002の2液組成)
サンプル名 |
WW-041
(1) |
WW-041
(2) |
WW-041
(3) |
WW-041
(4) |
WW-041
(5) |
溶剤系
現用(1) |
溶剤系
現用(2) |
検討項目 |
顔料組成 |
顔料組成 |
顔料組成 |
増粘剤 |
増粘剤 |
比較 |
比較 |
造膜性 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
耐海水性 |
△軟化 |
△軟化 |
△軟化 |
△軟化 |
△軟化 |
○ |
○ |
乾燥性
指触(hrs) |
- |
- |
- |
9 |
34 |
2 |
1 |
硬化(hrs) |
- |
- |
- |
4day |
5day |
30 |
5 |
塗膜硬度
/7日乾燥後
鉛筆硬度 |
- |
- |
- |
6B< |
6B< |
B |
5B |
|
(b)二次試験及び三次試験
一次試験の課題である乾燥性、耐海水性の改良を目的としたWB002樹脂系の試作品1〜6(二次試験)、試作品7、9〜14(三次試験)の提供を受けこれらを評価した。組成WW-047(1)、(2)、(3)にて検討を行なったが大差なく組成WW-047(1)の結果を表4.2.4-4、表4.2.4-5に示す。
二次試験結果は、一液目の組成をWW-047(1)〜(3)にしたことにより貯蔵安定性の改善が認められたが、一次試験と同様に乾燥性、耐海水性、塗膜硬度に課題が残る結果となった。三次試験結果は、樹脂の酸価をあげることにより乾燥性、塗膜硬度に改良が認められ、又、油長を減らすことにより乾燥性の改善は認められた。しかし、耐海水性に課題を残した。
表4.2.4-4 二次試験 組成WW-047(1)における試験結果
サンプル名 |
WW-047(1) |
溶剤系
現用
(1) |
溶剤系
現用
(2) |
使用樹脂 |
WB002 |
試作品
1 |
試作品
2 |
試作品
3 |
試作品
4 |
試作品
5 |
試作品
6 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
造膜性 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
耐海水性 |
▲
軟化 |
▲
軟化 |
▲
軟化 |
▲
軟化 |
▲
軟化 |
▲
軟化 |
▲
軟化 |
○ |
○ |
乾燥性
指触(hrs) |
4 |
2 |
5 |
2 |
2 |
3 |
2 |
2 |
1 |
硬化(hrs) |
88 |
96< |
87 |
68 |
96< |
28 |
48 |
35 |
4 |
塗膜硬度
/7日乾燥後
鉛筆硬度 |
6B< |
6B< |
6B< |
6B< |
6B< |
6B< |
6B< |
2H |
3B |
振かん硬度/回数 |
11 |
12 |
12 |
15 |
14 |
13 |
14 |
55 |
38 |
|
表中の評価基準 良好 ○>□>△>▲>× 不良
振かん硬度は振り子式硬度計を使用。数値が多いほど塗膜硬度が高いことを示す。
|
表4.2.4-5 三次試験におけるWW-047(1)組成の結果
サンプル名 |
WW-047(1) |
溶剤系
現用
(1) |
溶剤系
現用
(2) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
使用樹脂 |
WB002 |
試作品7 |
試作品9 |
試作品10 |
試作品11 |
試作品12 |
試作品13 |
試作品14 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
造膜性 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
○ |
○ |
耐海水性 |
▲
軟化 |
▲
軟化 |
▲
軟化 |
▲
軟化 |
×
軟化 |
×
軟化 |
×
軟化 |
- |
○ |
○ |
乾燥性
指触(hrs) |
2 |
2 |
2 |
2 |
1.5 |
1.5 |
1.5 |
- |
2 |
1 |
硬化(hrs) |
38 |
20 |
62 |
68 |
15 |
18 |
10 |
- |
35 |
4 |
塗膜硬度
/7日乾燥後鉛筆硬度 |
6B< |
6B< |
6B< |
6B< |
4B |
4B |
4B |
- |
2H |
3B |
振かん硬度/回数 |
12 |
15 |
13 |
14 |
25 |
23 |
29 |
- |
55 |
38 |
|
表中の評価基準 良好 ○>□>△>▲>× 不良
振かん硬度は振り子式硬度計を使用。数値が多いほど塗膜硬度が高いことを示す。
試作品14は顔料成分を加えるとクラックが多数発生したため検討を中止した。
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