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(3)アクリルエマルション系
 アクリルエマルションは、種々のモノマーがあることからモノマーの種類により、親水性成分を少なくすることが可能で、エステル結合が少ないためアルキッド樹脂に比べ、樹脂の硬度向上及び耐海水性を向上しやすいと考え検討をおこなった。また、アクリルエマルションは種々のモノマーにより設計裕度が大きく、水中で合成することができることからVOC低減には有効である。さらに、初期の樹脂の選択でエマルション系では凝集傾向にあったが、塗料の分散方法検討によりエマルションを分散することが可能となった。
 合成したエマルションの系統図、エマルションの内容と一般特性値を表4.1-10に示した。
 
(アクリルエマルション系の樹脂系統図)
 
表4.1-10  アクリルエマルション系での樹脂内容、一般特性値、樹脂単独での塗膜硬度、耐水性評価
 
 アクリルエマルション系の塗装後の硬度は、及び耐水浸漬後の硬度は、自己乳化型アルキッド系に比べ、高い傾向にあった。また、耐水白化性は良くなる傾向にあった。架橋成分Aを追加した試作品EM6、EM7の耐水後の塗膜硬度、白化性は、先に提出したEM1〜5と比較して向上するが、造膜しにくい傾向にあった。さらに、上記エマルションについて塗料化し防汚塗料としての亜酸化銅の分散性、塗料安定性を確認した。試作品EM3は混合分散可能であるが、試作品EM2は、混合するとゲル化した。また、5℃での樹脂単膜の造膜性は、EM2のみ成膜するが他のエマルションはいずれも成膜しなかった。亜酸化銅との混合分散可能であった試作品EM3をベースに低温造膜性及び顔料分散性改良のためサンプルを試作した。
 
(アクリルエマルション系統図(Tg、酸価))
 
(一般特性例)
表4.1-11  アクリルエマルション系での樹脂内容、一般特性値、樹脂単独の塗膜硬度、耐水性評価(1)
 
表4.1-12  アクリルエマルション系での樹脂内容、一般特性値、樹脂単独の塗膜硬度、耐水性評価(2)
(良好)○>○△>△>△×>×>××(不良)
[試験条件]
(1)乾燥条件:23℃で3日
(2)ガラス板にアプリケータ(250μm)で塗装
(3)耐水性(23℃)
 
 上記エマルションについて塗料化し、防汚塗料用樹脂の性能として重要な亜酸化銅を使用した場合の分散性、造膜性、乾燥性、塗膜硬度の試験を行なった結果、乾燥性、塗膜硬度は、現状の溶剤系塗料と同等であった。造膜性については試作品EM8、EM12が良好となったためEM8の系防汚塗料で、実践塗装を行なった。


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