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4. 防汚塗料に関する研究
4.1 基礎樹脂の研究
4.1.1 樹脂系の検討
 VOC量の少ない溶剤型ハイソリッド樹脂、水系樹脂について防汚塗料用樹脂としての適性を予備検討した。
 溶剤型ハイソリッド樹脂として長油系アルキッド樹脂、ポリエステルポリオールの2種、水系樹脂として自己乳化型アルキッド樹脂、水溶性オイルフリーアルキッド樹脂を含む6種を塗料化し、防汚塗料用樹脂の性能として重要な亜酸化銅を使用した分散性、塗料安定性を測定した(表4.1-2)。
 亜酸化銅の分散性は、シリコーン変性アクリルエマルションを除き良好であり、水系樹脂でも亜酸化銅を使用した塗料設計ができることがわかった。シリコーン変性アクリルエマルションは、エマルションを安定化している乳化剤と亜酸化銅が相互作用を起こすため著しく分散性が劣ると考える。
 塗料安定性については、自己乳化型アルキッド樹脂、水性アクリルエマルションにおいて、わずかに分離する傾向が見られた。また、水分散型アクリル変性エポキシエステル樹脂は経日で塗料表面が乾燥する傾向にあるが、再攪拌により塗装可能であった。一方、塗膜外観は、自己乳化型アルキッド樹脂、水溶性オイルフリーアルキッド樹脂が良好であった。長油系アルキッド樹脂、ポリエステルポリオールは、塗膜外観は良好であったが塗膜にタック感が残ることがわかった。
 亜酸化銅の分散性、安定性、塗膜外観が良好であった樹脂(水系2種、溶剤型ハイソリッド樹脂2種)について塗料化し、目標VOC、防汚塗料の評価を行った。溶剤型ハイソリッド樹脂は乾燥性が非常に劣ることがわかったため、低VOC化が可能な水系樹脂に絞り、検討を行った。最初に亜酸化銅を使用した塗料の分散性、塗料安定性、塗膜外観等が比較的良好であったWBO02(自己乳化型アルキッド樹脂)系について検討を進めた。アルキッド樹脂のエステル結合が加水分解をして防汚性能に付与できると考え、自己乳化型アルキッド系で検討をおこなった。
 
表4.1-1 防汚塗料における要求性能
項目 要求性能
長期防汚性 防汚機能60ヶ月(20ノット)以上保持を可能であること((1)加水分解性(2)撥水性(3)超親水性等の機能が必要)
VOC 200g/L以下
亜酸化銅の分散性 ゲル化、つぶの発生がないこと
亜酸化銅配合系の貯蔵安定性 貯蔵安定性(50℃6ヶ月)でゲル化、増粘しないこと
造膜性 成膜すること
海水浸漬
(フィルム)
異常(クラック、白濁)を生じないこと
 
表4.1-2 各樹脂の樹脂特性と亜酸化銅の分散性と塗料特性
(拡大画面:68KB)
(*1)塗料配合:樹脂/亜酸化銅/ガラスビーズ=20/40/40
(*2)分散方法:ペイントシェーカ 90分
(*3)塗装方法:15〜20μm(バーコータ塗装)


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