日本財団 図書館


(3)実船への試験塗装
 ユニバーサル造船(株)で建造中のバルクキャリアー船のTOPSIDE TANKの床面(30m2)とBOTTOM TANKの天井面(20m2)の一部に試験塗装を実施した。実船での塗装においても、塗装作業性、仕上がり外観共に良好な結果が得られた。実船のブロックでの塗装中、塗装後の写真を写真3.2.6-6、写真3.2.6-7〜写真3.2.6-11に示す。
 
写真3.2.6-6 TOPSIDE TANKのブロック
 
写真3.2.6-7 低VOC塗料を塗装中
 
写真3.2.6-8 TOPSIDE TANKの仕上がり
 
写真3.2.6-9 低VOC用エアレス塗装機
 
写真3.2.6-10 BOTTOM TANKの仕上がり
 
写真3.2.6-11 BOTTOM TANKの仕上がり
 
3.3 まとめ
 3ヵ年の研究から、現用樹脂系塗料のVOC低減化検討で、低粘度化を計る手法として分散剤の採用、低粘度化樹脂の活用で材料種・配合量の最適化により低VOC・低粘度化が計れることが分った。
 この手法は基礎樹脂系塗料にも適用可能であり、VOC45〜50g/Lの塗料化が達成でき、塗料開発技術の手法・方向性を見出したと考える。
 防食性能の評価試験において、今回導入した試験方法では基礎樹脂系塗料がショッププライマ鋼板に塗装された場合、乾湿交番+温度勾配試験の条件下では付着力が著しく低下することが確認された。
 この傾向は既存一般塗料では全く認められないが、現用樹脂系塗料、現用無溶剤塗料系でも同様の傾向が認められた。
 基礎樹脂系塗料の付着性向上は、開発樹脂配合量の適正化と硬化剤比の微調整により達成でき、塗膜物性面も改良された。
 然しながら、現用樹脂系塗料においては改良の解決手段が見出せず、厳しい条件下への適用には限界があると推測される。
 実船塗装において、基礎樹脂系開発塗料は塗装作業中の臭気が殆ど無く、また塗料ダストの発生も非常に少ないため塗膜仕上がり外観が非常に良好な事が確認できた。
 今後、実船塗装に用いた塗料の実験室における長期防食性確認の継続実験と実船の定期的な塗膜追跡調査は実施予定である。
 環境問題を最優先に考えなければならない現在、今後本研究で得られた塗料が主流となるのは明らかではあるが、塗料面の課題として今回開発した基礎樹脂の価格の問題と冬季でも工程を気にすることなく塗装可能な低温乾燥性良好な塗料開発が必要である。
 塗料メーカーの一員とし、今後更なる塗料面での課題解決に取り組んで行くが、より効率的な塗装作業性を追求するためのより進化した塗装機の開発と、実作業面におけるVOC低減のためには何を為さなければならないか塗装作業従事者の意識向上に期待したい。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION