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3.2 塗料化の研究
3.2.1 現用塗料の基礎調査
 バラストタンク用低VOC塗料開発にあたり、現在上市されている現用塗料のVOC量をカタログ及び実測値の調査を行い開発目標値決定の指針とした。VOC量測定法はEPA METHOD 24を採用した。
 
(1)カタログ値に基づくVOC量
 現用塗料の各社カタログ値に基づくVOC量を溶剤系、ハイソリッド系、無溶剤系の塗料について調査した結果を表3.2.1-1に示す。
 
表3.2.1-1 各社カタログ値に基づくVOC量
溶剤系塗料 ハイソリッド系塗料 無溶剤系塗料
密度 VOC 密度 VOC 密度 VOC
A社 1.27 298g/L 1.42 197g/L 1.50 -
B社 1.36 - 1.42 170g/L 1.48 0g/L
C社 - - 1.43 205g/L - -
D社 1.4 315g/L - - - -
E社 1.20 386g/L - - - 63g/L
F社 - - 1.38 211g/L - -
G社 1.4 244g/L - - 1.4 6g/L
 
(2)各社塗料のVOC実測結果
 現用の溶剤系、無溶剤系塗料のEPA METHOD 24に基づくVOC測定結果を表3.2.1-2に示す。
 
表3.2.1-2 各社塗料のVOC量及び粘性実測データー
A社
溶剤系 無溶剤系
不揮発分 110℃×1hrs 74.7 94.7
密度 g/ml 1.29 1.47
VOC g/L 327 84
粘度
(25℃)
mPa・s
塗料液 47000/6100 35300/6240
混合物 19800/2840 11800/2860
 
B社
溶剤系 無溶剤系
不揮発分 110℃×1hrs 73.6 95.1
密度 g/ml 1.29 1.42
VOC g/L 340 69
粘度
(25℃)
mPa・s
塗料液 19000/3500 80000/OVER
混合物 11700/2700 17500/4200
 
C社
無溶剤系 無溶剤系
不揮発分 110℃×1hrs 94.9 94.2
密度 g/ml 1.38 1.38
VOC g/L 70 80
粘度
(25℃)
mPa・s
塗料液 32000/7200 10500/3650
混合直後 12000/3600 4500/1900
 
(3)調査結果のまとめ
 カタログ値によるVOC量は、溶剤系で244〜386g/L、ハイソリッド系で170〜211g/L、無溶剤系で0〜90g/L又、実測による無溶剤系のVOC量は69〜84g/Lであることが確認された。カタログ値と実測値の相違はVOCの定義が国によって統一されていないためと推測される。
 調査結果から無溶剤系バラストタンク塗料のVOC開発目標として、EPA METHOD 24による測定方法で50g/L以下を目標値とした。
 
3.2.2 VOC低減塗料の設計指針と開発目標値
(1)VOC低減の設計指針
 米国ではVOC測定方法として EPA METHOD 24 *1)の手法を利用する場合の計算方法は次のように表わされる。
*1)(米国環境保護局)EPA METHOD 24 : Method 24 of 40 CFR part 60, appendix A, Determination of volatile matter content, water content, density, volume, solids, and weight solids of surface coatings
 
VOC=SG×(1-NV/100)×1000
 
VOC: VOC量(g/L)
SG: 塗料密度(g/ml)
NV: 塗料の不揮発分(%)
 
 この計算式よりVOCを低減するためには塗料密度の低下と高不揮発分の塗料設計にする必要があることがわかる。
 目標とするVOC 50g/L以下にするためのマトリックス表を作成し、目標値を設定した。その結果を表3.2.2-1に示す。
 
表3.2.2-1 VOC達成の塗料設計
発分密度\不揮 70% 80% 95% 96% 97%
1.0 300 200 50 40 30
1.1 330 220 55 44 33
1.2 360 240 60 48 36
1.3 390 260 65 52 39
1.4 420 280 70 56 42
1.5 450 300 75 60 45
1.6 480 320 80 64 48
(目標値)
不揮発分;96%以上 97%以上
密度;1.2以下 1.6以下
 
(2)開発目標
 本研究の目的はVOC低減塗料の開発であるが、バラストタンク用塗料に要求される性能として長期防食性能、塗膜物性並びに塗装作業性能の具備は不可欠である。
 塗膜耐久性を乾燥膜厚300μmとした場合の耐用期間(発錆率3%)を6年、乾燥膜厚600μmで10年以上を可能にする開発目標から、表3.2.2-2の試験方法と判断基準を設定した。
 
表3.2.2-2 開発目標
項目 試験項目と判断基準
不揮発分 EPA METHOD 24(110℃×1hrs)97%以上 (VOC50g/L以内)
密度 JIS K 5600-2-4に準ずる1.6以下
エアレス塗装 at25℃希釈シンナなしで、エアレス二次圧150MPa以上で良好
ダレない 上記条件でD.F.T 600μm(エアレス塗装)
希釈しなくてよい at25℃ BM型粘度60rpm 4500mPa・s以下
ポットライフ
(可使時間)
at25℃1hrs後エアレス塗装が可能
BM型粘度60rpm(1hrs後粘度/混合直後粘度=2以下)
貯蔵安定性 40℃×1ヶ月後 増粘なし
後作業性が早くできる 踏み込み試験で靴跡がつかないこと(D.F.T300μm)
20℃24時間 5℃2日
粘着がない D.F.T300μm塗布後塗膜上に粘着がないこと(20℃、5℃)
耐食性が良い
錆、フクレがない
温度勾配性
(40/20℃1W)
外観;錆なし、フクレNo.6F以下
付着力;素地20%以下/1.96MPa以上
ショットブラスト鋼板 膜厚
300μm
サンドブラスト鋼板
ショッププライマ鋼板
(セラモ)
耐水性
(40℃×12M)
外観;錆、フクレがないこと
付着力;素地20%以下/1.96MPa以上
ショットブラスト鋼板 膜厚
300μm
サンドブラスト鋼板
ショッププライマ鋼板
(セラモ)
3%耐塩水性
(40℃×12M)
外観;錆、フクレがないこと
付着力;素地20%以下/1.96MPa以上
ショットブラスト鋼板 膜厚
300μm
サンドブラスト鋼板
ショッププライマ鋼板
(セラモ)
耐電防性
(20℃×3M)
外観;錆、フクレがないこと
クリープ巾(片側10mm以内)
ショットブラスト鋼板 膜厚
300μm
サンドブラスト鋼板
ショッププライマ鋼板
(セラモ)
MARINTEKによる防食性* 乾室温度交番
(50℃/12h + 20℃/12h)サイクル
外観;錆、フクレがないこと
付着力;素地20%以下/1.96MPa以上
ショットブラスト鋼板 膜厚
300μm
ショッププライマ鋼板
(セラモ)
乾湿交番
(35℃塩水浸漬/6h+乾湿35℃/6h)サイクル
外観;錆、フクレがないこと
付着力;素地20%以下/1.96MPa以上
ショットブラスト鋼板 膜厚
300μm
ショッププライマ鋼板
(セラモ)
35℃塩水浸漬
外観;錆、フクレがないこと
付着力;素地20%以下/1.96MPa以上
ショットブラスト鋼板 膜厚
300μm
ショッププライマ鋼板
(セラモ)
耐物理性がよい
ハガレない
ガードナー 1.3J以上(径5/8inch 1/8m×1kg)
板厚6mmサンドブラスト板 D.F.T300μm 20℃1W乾燥
*: 試験条件が実際の環境条件に近いので、試験方法として追加採用した


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