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3. 防食塗料に関する研究
3.1 基礎樹脂系での基礎研究
3.1.1 樹脂系の選定
 海事・造船業で使用できる程度の耐久性を持ち、かつVOCを極少(50g/L)とした防食塗料用樹脂の開発を行い、将来の規制等に備えるとともに環境に優しい塗装の実現により環境保全に貢献することを目的にVOC低減をおこなった。VOC低減するためには、防食性能を有する高不揮発分(無溶剤)で塗装時に希釈しなくてすむような低粘度化した樹脂が必要とされる。
 現行のバラストタンク用無溶剤型塗料には、防食性に優れていることから主にビスフェノールA型エポキシ樹脂及び、低粘度化するために低分子量エポキシ樹脂を使用している。この低分子量エポキシ樹脂は、粘度調整に有効であるが、乾燥性、塗膜性能の点においては、マイナス要因となっている。
 そこで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を特殊変性剤で変性又は、他樹脂との併用することにより低粘度化できるのではないかと考え、検討をおこなった。塗料配合から要求される樹脂としての要求性能を表3.1-1に示す。
 
表3.1-1 樹脂設計要求性能
樹脂設計要求項目 樹脂特性
不揮発分(%) 100
粘度(mPa・s) 2,000以下
樹脂安定性 50℃、6ケ月
ゲル化しないこと
 
3.1.2 成分組成の最適化
 ビスフェノールA型エポキシ樹脂を長鎖の特殊変性剤で変性することにより、エピコート828タイプのビスフェノールA型エポキシ樹脂に比べ、高分子量にもかかわらず、低粘度化が可能であった(表3.1-2)。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と脂肪族エポキシ樹脂を併用することにより、さらに低粘度化が可能なことがわかった(表3.1-3)。まず、低VOCが可能であるか見極めるために低粘度化に一番有効であった脂肪族エポキシ系で検討を行なうこととした。
 
表3.1-2 ビスフェノールA型エポキシ樹脂系における特殊変性剤による低粘度化検討
(拡大画面:64KB)
 
表3.1-3 (ビスフェノールA型エポキシ/脂肪族エポキシ)系における低粘度化検討
(拡大画面:56KB)
 
 以上のように変性エポキシ系で低粘度化の見通しを得たが、25℃において樹脂が経日で増粘する傾向にあったため塗料化の検討までには至らなかった。表3.1-4に示すように変性エポキシ樹脂系は、経日増粘後も分子量が変化していないことから、官能基の反応による高分子量化が原因ではなく、水素結合等の分子会合によるものと推定した。
 そこで、特殊変成剤を変更し立体障害により水素結合が生じにくくなり安定性が改良できると考え、(1)特殊変性剤種類の検討(2)末端官能基変更(特殊変性剤末端エポキシ骨格)による改良を行った。
 
表3.1-4  ビスフェノールA型エポキシ/脂肪族エポキシ系における低粘度化品及び安定性


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