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(2)17年度試験
(a)試験片の準備
 17年度試験片に用いた塗料は開発塗料3種類、現用樹脂開発塗料2種類及び、現用塗料2種類の計7種類である。
a、b、cは開発樹脂S-14計の3種類
d、eは現用樹脂開発塗料2種類
f、gは現用の防食塗料である。
 これらはSS400鋼板にショッププライマ処理後に塗料を塗布した。
 
(b)湿浸水試験
 湿浸水試験は乾湿交番に変えて、高湿度状態と塩水浸漬の各6時間の交番試験である。温度は何れも40℃の雰囲気である。表2.3.1-4は付着力試験の結果を示した。
 
表2.3.1-4  付着力試験による塗膜性能評価(湿浸水試験3ヶ月)
下地処理 イ(ショットブライマー鋼板)
塗料種 n数 1 2 3 Blank
a 付着力(MPa) 7.9 4.8 5.3 10.0
破断箇所及び面積(%) 10
(3)接着剤内
(2)層内 90 10 100 100%
(2)層内(ショップ) 20
(1)層間 70
評価 10 10 10 10
b 付着力(MPa) 7.2 6.6 8.7 9.4
破断箇所及び面積(%) 20 70 3 10
(3)接着剤内
(2)層内 80 30 97 85
(2)層内(ショップ) 5
(1)層間
評価 10 10 10 10
c 付着力(MPa) 6.3 7.2 5.0 8.8
破断箇所及び面積(%) 10 20 25
(3)接着剤内
(2)層内 90 75 70 97
(2)層内(ショップ) 5 5 3
(1)層間
評価 10 10 10 10
d 付着力(MPa) - 5.7 8.3 9.0
破断箇所及び面積(%) 15 20 15
(3)接着剤内
(2)層内 15% 80 85
(2)層内(ショップ)
(1)層間 100% 70%
評価 10 10 10
e 付着力(MPa) 5.7 2.4 2.6 8.6
破断箇所及び面積(%) 10 10
(3)接着剤内
(2)層内 50 90
(2)層内(ショップ) 10
(1)層間 30
評価 10 6 7 10
f 付着力(MPa) 4.8 9.3 3.1 9.2
破断箇所及び面積(%) 98 10 10 3
(3)接着剤内
(2)層内 2 90 97
(2)層内(ショップ)
(1)層間 90
評価 10 10 8 10
g 付着力(MPa) 6.3 6.5 4.8 9.0
破断箇所及び面積(%) 80 100 97 85
(3)接着剤内
(2)層内 10 15
(2)層内(ショップ) 10 3
(1)層間
評価 10 10 10 10
 
 付着力試験からS-14系開発塗料は十分な性能であることが分かった。目視においては全ての試験片について膨れ、錆などの発生が皆無であった。
 
(c)塩水浸漬試験
 塩水浸漬試験は期間3ヶ月で行い、その付着力試験は表2.3.1-5に示す。
 
表2.3.1-5  付着力試験による塗膜性能評価(塩水浸漬試験3ヶ月)
下地処理 イ(ショットブライマー鋼板)
塗料種 n数 1 2 3 Blank
a 付着力(MPa) 9.3 3.9 7.1 10.0
破断箇所及び面積(%) 20 10
(3)接着剤内
(2)層内 80 50 100%
(2)層内(ショップ)
(1)層間 100
評価 10 9 10 10
b 付着力(MPa) 6.9 7.4 5.4 9.4
破断箇所及び面積(%) 15 15 15 10
(3)接着剤内
(2)層内 85 85 85
(2)層内(ショップ) 5
(1)層間 85
評価 10 10 10 10
c 付着力(MPa) 5.7 5.0 7.1 8.8
破断箇所及び面積(%) 10 20 20
(3)接着剤内
(2)層内 85 10 77 97
(2)層内(ショップ) 5 3 3
(1)層間 65
評価 9 10 10 10
d 付着力(MPa) 3.6 4.2 6.9 9.0
破断箇所及び面積(%) 100 95 15
(3)接着剤内
(2)層内 5 85
(2)層内(ショップ)
(1)層間 100%
評価 9 10 10 10
e 付着力(MPa) 4.1 4.0 6.9 8.6
破断箇所及び面積(%) 100 10
(3)接着剤内
(2)層内 90
(2)層内(ショップ)
(1)層間 100 100
評価 10 9 9 10
f 付着力(MPa) 5.5 6.1 7.0 9.2
破断箇所及び面積(%) 10 88 100 3
(3)接着剤内
(2)層内 85 2 97
(2)層内(ショップ) 5
(1)層間
評価 10 10 10 10
g 付着力(MPa) 10.0 6.8 6.3 9.0
破断箇所及び面積(%) 10 88 100 85
(3)接着剤内
(2)層内 85 2 15
(2)層内(ショップ) 5
(1)層間
評価 10 10 10 10
 
 塩水浸漬試験も付着力試験の点数も高く、湿浸水試験と同様に特に評価の低い塗料は見られない。開発防食塗料はVOCが50g/Lと大幅に低減することが出来た上に、現用塗料と比べて勝るとも劣らない事が分かった。
 
2.3.2 実海域暴露試験
(1)塗料及び暴露試験片
 実海域暴露試験用の塗料は開発塗料3種、現用塗料2種の計5種類の防汚塗料である。表2.3.2-1は試験片番号に対応する塗料名、試験片の平均膜厚を示したものである。
 
表2.3.2-1 供試塗料及び試験片塗膜の平均膜厚(μ)
試験片No. 塗料名 平均膜厚
1 WW51-1(水系開発塗料(1)) 104.4
2 WW51-2(水系開発塗料(2)) 102.2
3 WW51-3(水系開発塗料(3)) 109.5
4 現用-1(比較用溶剤系塗料) 111.2
5 現用-2( 〃 ) 117.8
 
 試験片の寸法は横10cm、縦30cmであり、鋼板2.3mm厚に下地処理を施した後に塗装した。試験枠は5試料横に取り付ける形式である。
 
(2)暴露試験
 暴露試験は(1)宮島、(2)弓削の2か所で開始した。試験片の位置は両者とも半没水と、海面下1mである(図2.3.2-1)。
(1)宮島における開始日時、9月14日14時
(2)弓削における開始日時、9月15日10時
 
図2.3.2-1 試験片の海面下の位置
 
(3)暴露試験結果
 宮島及び弓削における3ヶ月の暴露試験から、以下の結果が得られた。
・フジツボ等の動物性生物は塗膜表面に付着されなかった。
・藻類等の植物は付着が若干あった。
・スライムは塗膜表面に付着したが、洗い流せる程度であった。
 
2.4 まとめ
 船舶用塗料についての基礎調査、VOCの現状及び環境問題に関する取り巻く現状を調べた。その規制はさらに強まる傾向がある。
 現用及び開発塗料について揮発重量によるTVOC測定及びガスクロマトグラフィーによるVOC量を調べた。水系樹脂では揮発重量方式は適用できないが、ガスクロマトグラフィーによる方法では理論値と測定値がほぼ一致した。現用の防食塗料に含まれるVOC量は1L当たり、300〜400gと多いが、開発した防食塗料はおよそ半分以下のVOC量と大幅に低減された。
 溶出試験は開発塗料の性能を調べるために現用塗料を含めて行い、開発塗料が現用塗料と比較してもその特性には差が見られなかった。
 防食塗料の塗膜耐久性試験は乾湿交番試験、塩水浸漬試験及び塩水噴霧試験を実施した。試験期間が3ヶ月あるいは6ヶ月と短期間ではあるが、開発塗料は現用塗料と比べて同程度の性能であることが分かった。
 防汚塗料の実海域暴露試験は瀬戸内沿岸の2カ所で3ヶ月実施した。開発塗料と比較用の現用塗料とも動物性付着は見られず、スライムが付着する程度であった。


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