日本財団 図書館


2.2.2 溶出試験による経時変化の調査
(1)塗装試験検体の準備
 塗装試験体は現用塗料及び開発塗料である。
(a)形状:直径70mmの円筒形、高さ190mm
(b)材質:ポリカーボネート製
(c)塗布面積:200cm2
(d)膜厚:100μm
(e)乾燥工程:23-27℃・7日間自然乾燥
(f)試験数:6(各塗料各3)+Blank(未塗布)1+FAA分析用Spike1(銅50ppm調液)
 
 現行塗料及び開発塗料(F)における塗料の種類等は表2.2.2-1の通りである。
 
表2.2.2-1 塗料試験体と膜厚の初期値
試験片 塗料種 比重 塗布重量 平均膜厚 風袋重量 乾燥重量 溶出成分
A-1 溶剤系防汚塗料(1) 1.81 6.63 106.4 90.87 97.50 亜酸化銅
有機防汚剤
A-2 5.93 95.3 91.49 97.42
A-3 6.12 98.3 93.78 99.90
B-1 溶剤系防汚塗料(2) 1.70 5.43 88.5 92.01 97.43 亜酸化銅
有機防汚剤
B-2 5.53 90.2 92.26 97.79
B-3 5.94 96.9 91.73 97.66
C-1 溶剤系防汚塗料(3) 1.66 4.97 101.5 93.48 98.44 亜酸化銅
C-2 5.15 105.3 93.12 98.27
C-3 5.32 108.7 92.73 98.04
D-1 溶剤系防汚塗料(4) 1.89 4.54 84.0 93.08 97.61 亜酸化銅
有機防汚剤
D-2 4.98 92.2 92.23 97.21
D-3 4.88 90.3 92.04 96.92
E-1 溶剤系防汚塗料(5) 1.57 4.89 90.5 91.05 95.94 亜酸化銅
有機防汚剤
E-2 5.09 94.2 91.14 96.22
E-3 5.03 93.1 91.30 96.32
F-1 水系サンプル
WW-45
1.67 4.93 94.3 92.54 97.48 亜酸化銅
有機防汚剤
F-2 5.44 103.9 92.47 97.91
F-3 5.85 111.9 92.06 97.91
V-1 ブランク
V-2
*1・・・この塗料サンプルについては、公開データに基づき計算して記載
重量:g、膜厚:ミクロン
 
(2)溶出試験装置における試験体配置
 溶出試験装置のエージング漕へ配置した塗装試験体は表2.2.2-2に示す。
 
表2.2.2-2 試験体の配置
 
1〜20は試験体の位置番号
 エージング漕と循環層とは、フィルターを通して人工海水が循環している。
 
図2.2.2-1 溶出試験装置に取り付けた塗装試験体
 
 図2.2.2-1は試験体の配置を表2.2.2-2に示したものを、溶出試験装置に取り付けた塗装試験体の様子である。4行5列、20個の試験体はホイストで上下し、溶出試験時には所定の回転数が与えられる。本溶出試験装置及び計測器はASTM D 6442に準拠したものである。
 
(3)試験日
 1,3,7,10,14,21,24,28,31,35,38,42,45日経過後の13条件
 
(4)分析
 原子吸光光度計(以下、原子吸光)の取り扱い手順に則り、検量用試料で検量線を引いた後、分注容器に入った試験液(20個)を原子吸光に吸わせ、銅溶出濃度を測定する。
 
(5)試験結果
 銅濃度(Ccu or Cc)は次のように得られる。
Ccu=([生データ Lw]−[ブランクデータ])×[標準値]×DF/([標準値]−[ブランクデータ])
 希釈係数DFは希釈してないので1である。
ブランクデータ(Blank or Bk):塗装なし試験体の分析値
標準値(STD or Sd):銅濃度50ppbの分析値
平均値(N3の):Avg or Av
変動係数:(RSD or Rd)
 
 溶出試験による試験液への亜酸化銅の溶出量(溶存量R)は次の式で求めた。
R=(Ccu×1.5×24)/(T×200)
 ただし、Rの単位は1日24時間換算[mg/cm2]、試験液容量は1.5L、塗膜面積は200cm2、Tは溶出試験時間(撹拌時間hour)である。
 溶出試験時間はAA分析による銅濃度が、200ppbを大幅に超えないようエージング日数に応じて調整した。
 試験毎のR値の総計TRは次で得られる。
TR=R1+2(R3)+4(R7)+3(R10)+4(R14)+7(R21)+3(R24)+4(R28)+3(R31)+4(R35)+3(R38)+4(R42)+3(R45)
 
 各エージング日数における溶出試験のAAによる銅濃度の値の平均値からR値を求めて、グラフ化したものは図2.2.2-2である。
 
図2.2.2-2 溶出試験結果
 
 各塗料における銅溶出量は、エージング日数により減少傾向を示している。ただし、30日前後で多少増加したものあるいは、初期から大きな変化が示されないものもあるが、35日以降では、安定化している。開発塗料(F)の溶出の特性は、現用塗料と匹敵しており、溶出の性能的には劣らないものと判断できる。海技研が開発した溶出試験装置本体は、20検体一度に上下可能なので、エージング漕から溶出試験に移るときには試験体の時間的な差はない。
 図2.2.2-3は17年度における溶出試験の結果である。
 
図2.2.2-3 17年度調べた溶出試験結果
 
 17年度の溶出試験は水系樹脂開発塗料(A,B,C)、現用塗料(D,E)の5種類行った。試験方法は前年度と同様である。開発塗料は現用塗料に比べて特性が匹敵した。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION