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2.1.3 各社のMSDSによるPRTRデータ
 船舶用塗料のPRTR対象物質含有量を表2.1.3-1に示す。資料は塗料メーカーから得た。
 
表2.1.3-1(a)各種塗料とPRTR対象物質含有量(1)
(拡大画面:184KB)
 
表2.1.3-1(b)各種塗料とPRTR対象物質含有量(2)
(拡大画面:187KB)
 
2.2 成分の分析調査
 成分の分析調査は現用の船舶用防食塗料と、本研究で初めて開発した防食塗料のVOC量を調べる(16年度)。VOCの成分は総計としたTVOC量で求めた。17年度は新たに開発された樹脂を用い、塗料化したものについて、同様に測定した。
 
2.2.1 TVOC量の計測
(1)16年度の開発塗料及び現用塗料
 
表2.2.1-1 防食塗料におけるエージング後のTVOC量
Entry 試料名 乾燥時間(hrs.) TVOC量(g/L) 変動係数(%)
1 現用塗料1 24 254.22 1.58
2 240 321.78 0.43
3 現用塗料2 24 186.41 6.49
4 240 262.40 0.82
5 現用塗料3 24 191.32 30.24
6 -Re 24 221.24 1.54
7 240 265.79 0.85
8 現用塗料4 24 99.55 1.91
9 240 135.54 1.12
10 現用塗料5 24 33.33 8.59
11 240 28.10 7.66
12 開発樹脂塗料1 24 16.86 7.14
13 240 9.99 10.48
14 開発樹脂塗料2 24 25.81 6.53
15 240 16.70 3.38
)N=3における変動係数、-Re)再測定
 
 何れも2液性塗料であり、主剤/硬化剤を混合比(wt%)に基づき配合して、塗料を約3ccシャーレに入れて伸ばし24、240時間常温乾燥後、110℃1h加熱後に測定した。その値は表2.2.1-1に示す。開発塗料は下段の2種類である。表2.2.1-1において、現用塗料では経過時間によりVOCが増加、開発塗料ではTVOCが減少した結果となった。
 
(2)17年度の開発塗料及び現用塗料
 17年度は新たな開発防食・防汚塗料各3種類を加えてVOC量を測定した。供試塗料は次に示した10種類である。
 
A)開発塗料(S-14_1)、B)同(S-14_2)、C)同(S-14_3)、
D)現用樹脂塗料−1、E)現用樹脂塗料−2
F)開発塗料(水系樹脂WW-51_1)、G)同(WW-51_2)、H)同(WW-51_3)
I)溶剤系現用塗料−1、J)溶剤系現用塗料−2、1液性塗料
 なお、A〜Eは防食塗料、F〜Jは防汚塗料である。
 
 計測は、(a)揮発重量から求める方法、(b)ガスクロマトグラフィーによる2種の手法で行った。
(a)揮発量計測によるVOC測定
 VOC量は塗料混合後約2ccアルミプレートに平均塗布し、エージング時間がlh、3h、24h行い、110℃1時間加熱後に揮発重量を求めて調べた。表2.2.1-2は供試塗料と各エージング時間とVOC量の測定値(g/L)である。
 
表2.2.1-2 TVOC測定結果
塗料 混合比 比重 理論値 1h 3h 24h
S-14_1 86:14 1.41 - 52.5 61.1 50.1
S-14_2 87:13 1.50 - 75.2 52.4 68.7
S-14_3 87:13 1.44 - 65.2 60.5 52.3
現用樹脂−1 86:14 1.39 - 62.4 53.9 51.4
現用樹脂−2 86:14 1.44 - 50.6 48.9 49.3
WW-51_1 66:34 1.63 140 - - -
WW-51_2 75:25 1.95 55 - - -
WW-51_3 75:25 1.99 58 - - -
現用塗料_1 - 1.83 - 552.9 672.7 670.1
現用塗料_2 - 1.73 - 592.7 586.1 581.5
 
 開発防汚塗料(WW-51)は水系樹脂であり、揮発分にはVOCとともに主成分の水が含まれる。したがって、これらの樹脂を使用した塗料ではVOCの測定法が適切でないために、表2.1.1.の開発防汚塗料にはVOCは理論値で表した。開発した防食塗料(S-14系樹脂)は何れもVOCが50g/Lに近いことが分かった。
 
(b)ガスクロマトグラフィーによるVOC測定
 揮発重量方式によるVOCは水分も含まれるので、水系塗料への適用は不向きである。ここではガスクロマトグラフィーによるVOC量を調べた。塗料に含まれるVOC種とそれらの検量線を作成することで、塗料内の各VOCの総量から定量測定が可能となる。表2.2.1-3はその結果である。
 
表2.2.1-3 ガスクロマトグラフィーによるVOC測定結果
(拡大画面:88KB)
 
 表2.2.1-3における開発防汚塗料のTVOC量は、表2.2.1-2のVOC理論値とほぼ一致した。水系樹脂の防汚塗料は、VOC量が大幅に低減されたことが分かった。


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