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5. 神戸少年の町版コモンセンス・ペアレンティングビデオ教材
披露会の開催と評価
 2005年12月4日にこれまでの章で解説した神戸少年の町版CSPビデオ教材の披露会を行った。
 
5.1 対象
 2005年12月までに神戸少年の町でトレーナー養成講座を修了した専門職(176名)を対象とし、郵送による参加の呼びかけを行ったところ、61名が参加した。
 
5.1.1 所属機関・職種
 以下のとおりである。
 
表5-1 所属機関表
児童相談所 31名
児童養護施設 18名
保健所 3名
児童自立支援施設 2名
福祉事務所 2名
家庭支援センター 2名
乳児院 1名
情緒障害児短期治療施設 1名
障害発達センター 1名
61名
 
5-2 職種
児童心理司 26名
児童指導員(主任含む) 11名
児童福祉司 6名
保育士 4名
心理士 3名
相談員 3名
看護師 1名
その他
(施設長、個別対応職員等)
7名
合計 61名
 
5.2 日時と場所
 2005年12月4日(日)にチサンホテル神戸にて開催した。
 
5.3 発表者
 発表者はプログラムを開発した社会福祉法人神戸少年の町児童指導員の野口啓示が務めた。
 
5.4 参加費
 経費には全て助成金を当て、参加費を無料とした。
 
5.5 披露会の内容
 披露会の内容を報告する。プログラムは表5-3のとおりである。第二部の「神戸少年の町版CSPビデオ教材の作成に向けてのリサーチから得られた方向性と改善点」では、4.2と4.3.1章で報告した内容を解説した。また、第一部の「ビデオとマニュアルの解説」では、実際のビデオプログラムをスクリーンに映写しながら、4.3.2で報告した内容を解説した。
 
表5-3  神戸少年の町版コモンセンス・ペアレンティングビデオ教材披露会
タイムスケジュール
期日 時間 内容
12/4
(日)
12時〜1時 受付
1時〜 はじめに
(施設長あいさつ)
1時半〜5時 神戸少年の町版コモンセンス・ペアレンティング披露会
第一部:
神戸少年の町版コモンセンス・ペアレンティングビデオ教材の作成に向けてのリサーチから得られた方向性と改善点
第二部:ビデオとマニュアルの解説
第三部:質疑応答
 
5.6 披露会参加者による神戸少年の町版CSPビデオ教材への評価
 披露会の終了時に参加者にアンケートを実施し、教材への評価をしてもらった。残念ながら、参加した全員から回答を得ることはできなかったが、53名がアンケートを提出し、回収率は86.9%であった。「全体的にみて、神戸少年の町版CSPは満足できる内容でしたか?」の質問には、「どちらかというと満足した」を含めるとアンケートを提出した53名中52名(98.1%)が満足したと答えた。「米国版と比較して、日本の実践で有用だと言える内容でしたか?」の質問には、「どちらかというと満足した」を含めると回答をした52名中50名(96.2%)が満足したと答えた。また、各プログラムに関する満足度は、全てのプログラムにおいて高い満足度が得られた。
 これらの結果から、神戸少年の町版CSPビデオ教材への満足度の高さが示された。
 
表5-4  披露会参加者による神戸戸少年の町版CSPビデオ教材への満足度評価
非常に満足した 満足した どちらかというと満足した どちらとも言えない 合計
全体的にみて、神戸少年の町版CSPは満足できる内容でしたか? 11名
(20.8%)
33名
(62.3%)
8名
(15.1%)
1名
(1.9%)
53名
米国版と比較して、日本の実践で有用だと言える内容でしたか? 12名
(22.6%)
31名
(58.5%)
7名
(13.2%)
2名
(3.8%)
52名
無回答1名
わかりやすいコミュニケーションの教材(ビデオとマニュアル)は満足できる内容でしたか? 11名
(20.8%)
37名
(69.8%)
5名
(9.4%)
0名 53名
良い結果・悪い結果の教材(ビデオとマニュアル)は満足できる内容でしたか? 14名
(26.4%)
29名
(54.7%)
10名
(18.9%)
0名 53名
効果的な誉め方の教材(ビデオとマニュアル)は満足できる内容でしたか? 16名
(30.2%)
32名
(60.4%)
5名
(9.4%)
0名 53名
予防的教育法の教材(ビデオとマニュアル)は満足できる内容でしたか? 14名
(26.4%)
30名
(56.6%)
7名
(13.2%)
2名
(3.8%)
53名
問題行動を正す教育法の教材(ビデオとマニュアル)は満足できる内容でしたか? 12名
(22.6%)
31名
(58.5%)
7名
(13.2%)
3名
(5.7%)
53名
自分自身をコントロールする教育法の教材(ビデオとマニュアル)は満足できる内容でしたか? 15名
(28.3%)
31名
(58.5%)
6名
(11.3%)
1名
(1.9%)
53名
注 7段階で評価(7: 非常に満足した、6: 満足した、5: どちらかというと満足した、4: どちらともいえない、3: どちらかというと期待はずれだった、2: 期待はずれだった、1: 非常に期待はずれだった)
 
5.7 まとめ
 神戸少年の町版CSPビデオ教材披露会を行い、教材への評価を行った。全体的にみると、高い満足度が得られた。自由記述欄でも、「ビデオが新鮮。日本版は見やすい」「CSPがより身近になった。共感する点が多くなった」「日本人になったので、イメージしやすい。日本の文化、習慣、生活に合わせている。とても共感しやすくなり、満足度はアップです」「違和感が無くなった」「シンプルにしてあり、親がとっつきやすい内容になっている」等ポジティブな意見が多く出されていた。
 また、6回のプログラムそれぞれでも、高い評価を得た。「良い結果・悪い結果」については、「よかった体験・しまった体験」というネーミングや「もう一度させる方法」(レスポンスコストに相当)「元に戻す責任をとる方法」(オーバーコレクションに相当)といった悪い結果についての評価が得られた。また、表を用いたしつけの方法やタイムアウト等についても同様に高い評価を得た。
 全体的にみると、高い評価を得ているが、いくつかの課題が提起された。一つは、日本人が出演するために、よりリアルになったことに対しての意見である。多くが好意的な意見を持ったのに対し、「役者の演技に違和感、外国人だからゆるされていた演技や場面の違和感が日本人だと余計に感じる」「より身近でリアルな感じになったが、なまなましい感じがします」「直面しなければならず、逃げられないなと感じた」等の意見がでた。ペアレント・トレーニングの一つであるSTEP3の教材で、かつて社会心理学者の南博はアメリカの事例をそのまま用いた理由として、「あまり自分たちの日常生活に近いようなケースに翻訳してしまうと、かえって事例を客観的に見つめることができなくなってしまうということです。つまり、少し離れているからこそ「考える」という作業ができるのです」と説明し、しつけの仕方についての振り返りをするには、外国の場面で行うのが効果的だと述べた。このことを考えると、対象や目的に応じて、米国版と日本版を使い分けることの必要性が示唆されるのである。
 また、他の意見としては、「今回は年齢が低い子どもが対象となっているので、思春期版を作って欲しい」や「施設版が欲しい」といったもの、また、「夫婦で協働してしつけを行う場面はどうか」というものがあった。
 
3 STEP: Systematic Training for Effective Parenting(『ステップ親のためのハンドブック』監修南博、著者ドン・ディックメイヤー&ゲーリー・マッケイ、訳者柳平彬、発心社1982)


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