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(2)世界の商船の限定した数の代表船舶に対しフルスケールの船上試験を実施する必要性(DE48/17/1、ブラジル提案)
1)提案概要
 本文書は、世界の商船の限定された代表的な船舶に対してフルスケールの船上試験を実施する必要性を強調している。また、必要とする船上試験は、MEPC52での議論を踏まえて、減少させたとしているが、6船種の4サイズ、さらには異なる環境での試験を提案し、6ヶ月以内で連続3回のD-2基準達成を要求している。さらに、該当するガイドラインにはG8だけでなくG10も加えている。
 MEPC52では、G8について審議され、MEPC52/WP.7に審議内容を踏まえた草案(附属書1、後に、事務局よりMEPC53/2でエデュトリアな修正が加えられた。)が収録された。その審議及び草案における今後の主要検討内容は、型式承認プロセスに船上試験を加えるか否かとなっている。本提案は、これら背景を基に、船上試験が承認手順として不可欠であると強調すると共に、船上試験の対象となる具体的な船種とサイズ及び環境条件を記している。
2)対処方針
 我が国は、G8における船上試験に関しては、科学的不確実性、現実性、試験費用の増大を理由に一貫して不採用を提言している。特に、生物に対する性能試験に関しては、非常に厳しい条件(通常よりも高い生物濃度等)及び科学的に高精度の陸上試験を実施して装置の性能を評価することになるため、船上での性能試験は不必要であると主張している。よって、船上試験実施を前提とする本提案に関しては、基本的に反対する。また、本提案では、MEPC52における同様のブラジル提案(MEPC52/2/5)よりも減少させたとしているが、6船種の4サイズさらには異なる環境での試験を要求している。このような多数の船上試験を実施することは、その実施の困難性から、承認される処理システムの開発遅延や条約の発効の遅延につながる可能性もある。一方、船主には、型式承認前の処理装置を船舶に搭載することを要求することにもなる。よって、速やかな実効性ある規制の実施と条約の発効を望む我が国としては、本提案には基本的に反対する。なお、G8における船上試験実施の適否に関しては、本DE48ではなく、7月のMEPC53で最終審議される内容であると考えられることから、本提案に関する我が国の主張等は、議場での審議状況を見極め、適宜対処とする。
 DE48への日本提案文書は(MEPC52/WP.7におけるバラスト水管理システムの承認のためのガイドライン(G8)草案のためのコメント、DE48/17/2、巻末資料編に収録)、3.1.5.2に示したG8の再吟味結果を受けて、実効性のある試験実施の観点で作成し、2004年12月末にIMO事務局に提出した。その骨子は、3.1.5.2に示した次の指摘点である。
(1)Paragraph 3.11(定義):陸上試験を行える施設には、陸上の施設だけでなく試験船や試験バージ等を含む方が、試験実施を実効性を高めるため、その旨を明示する。
(2)Paragraph 5(陸上試験):G8本編5章に陸上試験のダウンスケーリングに関する項目が記載されている。しかし、陸上試験の要件は、Part 2 2.3項に記載されているので本項に移動する。
(3)Paragraph 2.3.26 及び 2.3.27(サンプリング):条約で規定する生物の大きさの表記の趣旨と合わせるため、試料を採取する際に用いるメッシュのサイズの規定を、「対角の長さ」とあるのを「辺の長さ」へ変更する。
(4)Paragraph 2.3.25.3(サンプル分析):バクテリアのサンプリングの対象を、「heterotrophic bacteria」としているが、Part 4 4.7.4〜同.6では、「Vibrio Cholerae」、「E.coli」、「intestinal Enterococci」を分析の対象としており「heterotrophic bacteria」の分析は行うことにはなってない。よって、分析の対象を「D-2で明記された指標病原菌」と変更する。
 米国は、G8作成の積極推進国であり、プロトタイプ装置の承認システム・プログラム(STEP)及び陸上試験施設(ETV)をすでに稼働させている。そこで、米国の主管庁である沿岸警備隊(USCG)との意見交換を行うべく、2004年11月16日にワシントンの米国環境保護庁で開催された「交通に起因する環境問題に関する政策対話」に参加し、情報交換を行った。
 米国における処理装置承認システムの考えは、次の通りであるとの説明であった。
(1)ETVの陸上試験施設は、処理システム開発者に対する実験場の提供を意図したものである。処理システムの承認については別のスキームとなり、現在コメントを集めている。
(2)STEPにおける処理システム船上設置装置のスケールについては、フルスケールが条件である。船内の限定されたバラストタンク内の水を処理するシステムについては別のスキームとなる。
(3)バラスト水処理システムによる処理は、米国200海里以遠での実施要件は無く、沿岸及び港湾内でも許可される。
 本項では、MEPC52で作成されたG8草案(MEPC52/WP.7,MEPC53/2)を基に、バラスト水処理システムの型式承認試験手順、必要施設及び経費(環境試験を除く)についてとりまとめた。
(1)陸上試験
1)陸上試験設備概要
 図3.1.1には、MEPC52で作成されたG8草案に基づく陸上型式承認設備の概要例を示した。なお、試験設備は、想定処理水量を200m3/hrとし、必要な各設備に余裕を加えた。
 構成各設備の仕様を以下に示す。
a. ポンプ類
(1)ポンプ(3機、記号:P):200m3/hr、防触
(2)バラストポンプ(3機、記号:BP):400m3/hr、防触
b. タンク類
(1)原水一次貯蔵タンク(1基):600m3、防触
付帯設備:自動洗浄・乾燥装置、循環装置、エアレーション装置、照明装置
(2)50um以上生物培養タンク(2基):60m3、防触
付帯設備:循環装置、エアレーション装置、照明装置
(3)50um以上予備生物培養タンク(2基):60m3、防触
付帯設備:循環装置、エアレーション装置、照明装置
(4)10-50um生物培養タンク(2基):60m3、防触
付帯設備:循環装置、エアレーション装置、照明装置
(5)10-50um予備生物培養タンク(2基):60m3、防触
付帯設備:循環装置、エアレーション装置、照明装置
(6)培養生物混合タンク(1基):120m3、防触
付帯設備:自動洗浄・乾燥装置、循環装置、エアレーション装置、照明装置
(7)処理水貯蔵タンク(1基):300m3、防触、遮光、バラストタンク内部構造
付帯設備:自動洗浄・乾燥装置、循環装置
(8)コントロール水貯蔵タンク(1基):300m3、防触、遮光、バラストタンク内部構造
付帯設備:自動洗浄・乾燥装置、循環装置
(9)試験排水一次貯蔵タンク(1基):600m3、防触
付帯設備:なし
c. その他
(1)サンプリング設備(7基):防触
(2)試験排水浄化設備(1基):高度処理法、20m3/hr
(3)使用電力モニター装置(設備全体、1基):
(4)流速測定センサー(6基)、モニター記録装置(1基):
測定箇所:各ポンプ付近
(5)圧力測定センサー(12基)、モニター記録装置(1基):
測定箇所:各ポンプの前後
(6)水質測定センサー(7基)、モニター記録装置(1基):
測定箇所:各サンプリング箇所の主配管部、測定項目:塩分、pH、D0、NTU
(7)配管設備(1式):防触
(8)試験設備全体制御盤(1式):
 
図3.1.1 陸上型式承認設備の概要例
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