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3.1.4 MEPC52での他国提案の概要と対処方針
 MEPC52において、型式承認方法に関連する他国の提案は、米国から次の提案がなされている。以下には、提案文書の概要と対処方針を示す。
(1)バラスト水管理システムの承認のための手順(MEPC/52/2/10、米国提案)
3.1.4.1 バラスト水管理システムの承認のための手順(MEPC/52/2/10、米国提案)の概要と対処方針
(1)提案概要
 本提案は、G8のオランダ提案(MEPC52/2/5)をベースに米国意見を含めたバラスト水処理装置承認ガイドライン(G8)の草案である。なお、補足文書としてMEPC52/INF.14とMEPC52/INF.5があり、MEPC52/INF.14は米国のプロトタイプ処理装置の承認手順であるSTEPの紹介をし、MEPC52/INF.5では、米国試験機関(ETV)における陸上試験プログラムの紹介をしている。
 MEPC 52/2/10の全体的な構成は油水分離器の承認ガイドラインであるMEPC107(49)に準拠しており、内容としてはオランダ提案(MEPC52/2/5)を踏襲しつつ、STEPの方法を取り込んでいる。主管庁・船主・運航者等の規定は、オランダ提案からかなり除外している。基本的には、オランダ提案(MEPC52/2/5)の内容から大きく外れる内容ではなく、ガイドラインとしての完成度はこちらの方が高い。また内容としても受け入れられる内容である。バラスト水処理装置の承認手順としては、製造者は、予備試験として小規模(実験室レベル)、中規模(ドックまたはバージのサイズ)及びフルサイズ(1隻以上の実際の大きさの装置による6ヶ月間の船上試験)以上3種類の陸上・船上試験を実施しデータを作成する。その後、主管庁による、書類審査、上記、陸上・船上試験結果の評価、陸上試験の実施及び電気電子部分の環境試験を実施した上で承認される。主管庁による試験方法の概略は下記の通り。
(1)生物に対する効果は、試験水の処理前と処理後のサンプルの比較で行う。
(2)統計学的に100%の証明でD-2を満足すること。
(3)試験水性状であるDOCとPOMは、8-12mg以上。
(4)試験流入水の生物条件は、日本が提案した生物+底生生物の幼生を規定し、濃度の規定なし。
(5)試験流入水中の指標種の試験水への添加は、有効性を認めた上で、生物拡散の危険性等も問題点の指摘と対応策を記載する。
(6)最低サンプル量3m3、副サンプル1m3
(7)バクテリアの分析方法は、日本提案と離反していない。
(8)動植物プランクトンの分析方法は、D-2と関連していない。特に、動物プランクトンはエタノールで固定したサンプルで分析することとなっている。原生生物(植物プランクトン等)に関しては、栄養塩添加の培養試験も提案。動物プランクトンに関しては、viabilityの評価方法として、染色法と触角接触法等を提案している。
(2)対処方針
 MEPC52におけるG8原案は、オランダが通信部会を経て提案したMEPC 52/2/5である。しかし、米国は、通信部会の回答期限まで完全なコメントを提出出来なかったため、本提案文書を個別提案としたものである。
 提案の内容は、G8オランダ提案の延長線上にあり、また、内容も受け入れられるものである。よって、本文書をG8バラスト水処理装置承認ガイドラインの原案とすることに関しては、下記に留意し受け入れて差し支えないものとし、ガイドラインが定められたスケジュールて採択されるよう対処することとした。
(1)Annex Part 1(1.1.1.1.2.1項)関連:製造者による6ヶ月間の予備船上試験では、生物学的分析試験が含まれているが、期間中の生物学的分析試験の頻度に関しては、実行可能な回数となるよう主張する。
(2)Annex Part 2(2.2.3項)関連:試験水のDOCとPOMの8-12mg以上の規定は、現実的な海水濃度から低くし、POMは具体的な測定項目としてPOCとする。また、ミネラルの規定も具体的な項目にすることを主張する。
(3)Annex Part 2(2.2.6項)関連:陸上承認試験において、試験水の総容量(現在[X]m3)が審議される際は、総容量が国内の試験設備で実行可能な数値となるよう主張する。
(4)Annex Part 4(4.1.1.3.2.1項)関連:動植物の分析方法に関しては、条約規則D-2に即した日本提案を考慮するよう主張する。
(5)Annex Part 6(6.1.3.2.1項及び6.1.4.2.1項)関連:初回検査及び中間検査時の処理装置の試験の内容の審議において、処理水の生物学的分析試験の実施が提案された場合、試験の実施が実質上非常に困難であること、及び他の機器(油水分離器、ODM、糞尿処理装置等)では定期的検査時に処理水の分析は要求されてないこと等を説明した上で、定期的検査時の処理水の生物学的分析試験は含まないよう主張する。
 MEPC52では、G8に関して集中的に審議され、MEPC52プレナリーへの報告文書MEPC52/WP.7.ANNEX 1としてとりまとめられている。さらに、この報告文書は、編集上での若干の修正が加えられMEPC53/2として文書化されている(MEPC53/2及びその仮訳は、巻末の資料編に収録)。
 現時点でのG8草案の構成を以下に示す。
3.1.5.1 現時点でのG8草案(MEPC52/WP.7.ANNEX1及びMEPC53/2)の構成
 
バラスト水管理システムの承認のためのガイドライン
1 序文
一般
ゴール及び目標
適用
要求の要約
2 背景
3 定義
4 技術仕様
バラスト水管理システム
バラスト水処理装置
制御及びモニター装置
5 バラスト水管理システムの承認のための陸上試験
バラスト水処理装置のスケーリング
6 計画承認の工程の為の典型的な書類要求
7 承認及び証明書手続き
8 設置要求
サンプリング施設
9 設置審査及び監修手続き
 
附属書
 
PART 1 - システム文書の事前試験の評価のための仕様
一般
準備評価
試験提案の評価
書類
 
PART 2 - バラスト水管理システムの承認のための試験及び性能仕様
[主官庁は陸上及び船上試験の結果を決定する。]
[2.2 船上試験
船上試験の成功基準]
2.3 陸上試験
陸上試験の目的、評価のための制約条件と基準
陸上の施設
陸上試験の設計入口及び出口の基準
陸上のモニタリング及びサンプリング
2.4 試験結果の報告
 
PART 3 - バラスト水管理システムの環境試験のための仕様
試験仕様
試験仕様の詳細
振動試験
温度試験
湿度試験
荒海に対する防御の試験
電力供給の変動
傾斜試験
電気及び電子装置の信頼性
 
PART 4 - バラスト水の生物学的成分の決定の為のサンプル分析方法
サンプル処理及び分析
サンプル分析
サンプル分析方法は、下記による情報を参考にする。
.1 The Handbook of Standard Method For the Analysis of Water and Waste Water
.2 ISO standard methods
.3 UNESCO standard methods
.4 World Health Organization
.5 American Society of Testing and Materials (ASTM) standard methods
.6 U.S.EPA standard methods
.7 Research papers published in peer-reviewed scientific journals
.8 MEPC paper.
付録1
バラスト水管理システム型式承認の証明書
図1
可能な陸上試験の構成図
 
3.1.5.2 現時点でのG8草案(MEPC52/WP.7.ANNEX1及びMEPC53/2)の再吟味
 MEPC52で作成されたG8草案は、2005年2月に開催されるDE48に照会した後、MEPC53で再審議を行い採択することとなった。よって、DE48に向けては、G8草案の再吟味を行い、次の内容をDE48での指摘点とした。
(1)Paragraph 3.11(定義):陸上試験を行える施設には、陸上の施設だけではなく、試験船や試験バージ等を含む方が、試験実施を実効性を高めるため、その旨を明示する。
(2)Paragraph 5(陸上試験):G8本編5章に陸上試験のダウンスケーリングに関する項目が記載されている。しかし、陸上試験の要件は、Part 2 2.3項に記載されているので本項に移動する。
(3)Paragraph 2.3.26 及び 2.3.27(サンプリング):条約で規定する生物の大きさの表記の趣旨と合わせるため、試料を採取する際に用いるメッシュのサイズの規定を、「対角の長さ」とあるのを「辺の長さ」へ変更する。
(4)Paragraph 2.3.25.3(サンプル分析):バクテリアのサンプリングの対象を、「heterotrophic bacteria」としているが、Part 4 4.7.4〜同.6では、「Vibrio Cholerae」、「E.coli」、「 intestinal Enterococci」を分析の対象としており「heterotrophic bacteria」の分析は行うことにはなってない。よって、分析の対象を「D-2で明記された指標病原菌」と変更する。
3.1.5.3 DE48におけるG8関連他国提案文書の解析と対処方針の検討
 DE48における型式承認試験方法に関連する他国提案文書は、ブラジルから次の2文書であった。
(1)バラスト水管理システムに関する重要情報に対する必要な質問(DE48/17、ブラジル提案)
(2)世界の商船の限定した数の代表船舶に対しフルスケールの船上試験を実施する必要性(DE48/17/1、ブラジル提案)
(1)バラスト水管理システムに関する重要情報に対する必要な質問(DE48/17、ブラジル提案)の概要と対処方針
1)提案概要
 本文書は、G8で船上試験が世界の代表的な商船に対し複数実施されることを前提に、それら船上試験で作動及び性能が確認されるべきと主張している。また、バラスト水条約の規則D-5の見直し審査のためにも、船上試験が必要性であると強調すると共に、MEPC52/WP.7の附属書3に収録されている見直し審査に関する要求事項に関する質問を記している。
 MEPC52で、船舶のバラスト水処理装置承認ガイドラインが審議され、MEPC52/WP.7に審議内容を踏まえた草案(附属書1、後に、事務局よりMEPC53/2でエデュトリアな修正が加えられた。)が収録された。その審議及び草案における今後の主要検討内容は、型式承認プロセスに船上試験を加えるか否かとなっている。本提案は、これら背景を基に、船上試験の重要性を強調したものとなっている。また、同、MEPC52では、条約規則D-5の基準等の見直し規定についても審議され、MEPC52/WP.7に審議内容を踏まえた草案(附属書3、後に、事務局よりMEPC53/2/2でエデュトリアな修正が加えられた。)が収録された。その審議及び草案では、バラスト水処理装置を安全性、環境への受入れ、現実性、費用効果及び生物学的効果等の面で評価し、各国に対してMEPC53にこれら情報の提供を要望し、見直しの審議に着手することを求めている。本提案は、これら審議及び草案を基に、基準の見直し及び処理装置の評価には、船上試験での各種情報が不可欠であることを強調し、MEPC52/WP.7附属書3(MEPC53/2/2)の処理装置評価項目に対する具体的な質問事項を行っている。
2)対処方針
 我が国は、G8における船上試験に関しては、科学的不確実性、現実性、試験費用の増大を理由に一貫して不採用を提言している。特に、生物に対する性能試験に関しては、非常に厳しい条件(通常よりも高い生物濃度等)及び科学的に高精度の陸上試験を実施して装置の性能を評価することになるため、船上での性能試験は不必要であると主張している。よって、船上試験実施を前提とする本提案に関しては、基本的に反対する。また、本提案は、G8と条約規則D-5の基準の見直し規定を一体化し、基準の見直し及び処理装置の評価には船上試験による情報が必要であることから、G8においても船上試験が不可欠であるとしている。しかし、G8とD-5の見直しを一体化して考える理由はなく、仮に一体化した場合には、多くの船上試験の実施が型式承認要件となり、その実施の困難性から、承認される処理システムの開発遅延や、条約の発効の遅延につながる可能性もある。一方、船社には、型式承認前の処理装置を船舶に搭載することを要求することにもなる。よって、速やかな実効性ある規制の実施と条約の発効を望む我が国としては、本提案には基本的に反対する。G8とD-5の見直しの関係については、G8で承認された処理装置に関する各種情報を、搭載した船舶や旗国等に求め、それら情報を基に、基準等の見直しのための処理装置の評価を行う方が合理的であるとし、我が国としては、個別で審議を進め、G8の早期締結を目指すと共に、D-5に関しては各国への要求事項のとりまとめを優先する方が適切である旨を主張する。なお、G8における船上試験実施の適否やD-5の見直しに関しては、本DE48ではなく、7月のMEPC53で最終審議される内容であると考えられることから、本提案に関する我が国の主張等は、議場での審議状況を見極めた上で、適宜対処とする。







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