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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/07/23 毎日新聞朝刊
[社説]ASEANに地歩得た中国−−南沙諸島問題
 
 二十一、二十二日マニラで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議で最大の焦点になったのは、南シナ海に散在する南沙諸島の主権、開発を巡る諸問題だった。
 この問題が緊急の課題として浮上したために、今回の外相会議では、域外からのゲストである中国が、最大の主役としてスポットライトを浴びることになった。
 中国は南沙諸島に争う余地のない主権を持っているとして、領海法にその領有を明記している。だがこの諸島はベトナムがチュオンサ諸島の名で全面領有を主張、ほかにマレーシア、フィリピン、ブルネイと台湾が部分領有を主張している。
 ブルネイを除く関係諸国・地域は軍隊を送って部分的に実効支配を行っているほか、この諸島はスプラトリー諸島と呼ばれることが多いほどで、領有権が国際法上確定しているといえるかどうかは難しい。
 諸島とはいっても島と呼べるほどの広がりを持っているものは少なく、ほとんどは岩礁、環礁のたぐいである。だが、周辺海域に石油・ガス資源の埋蔵が見込まれるのと、インド洋と太平洋をつなぐルート上に位置するのとで、関係国の姿勢は強硬で、領有権で妥協する気配はない。
 周辺国だが領有を主張していないインドネシアの仲介で、これまで三回にわたって関係国が非公式協議を重ね、領有権問題を棚上げして共同開発を進めることで合意ができていた。
 ところが今年に入って、中国は領海法を制定して南沙諸島を領土に組み込み、米国企業とこの海域での海底油田探査の契約を結び、さらに軍隊を出動させて岩礁の一つに領土標識を立てるなど、一方的な行動に出て周辺諸国を緊張させている。
 こうした状況下で開かれたASEAN外相会議に、ゲストとして招かれた銭其〓・中国外相は、領有権問題を棚上げにし、当事国間で共同開発を進めるという、従来の中国政府の立場を再確認した。
 おそらく中国は領有権を放棄する気はないだろうが、共同開発を認めることで、中国がこの海域、ひいては東南アジアに利害を持っていることを、ASEAN諸国に確認させる意図があったものと思われる。
 中国は東アジアの大国ではあるが、東南アジアの国ではない。しかし今回のASEAN外相会議で、この地域に直接的利害を持つ重要関係国としての地位を認めさせることに成功した。この結果、将来必ず議題にのぼってくるはずのASEAN安保構築に、発言権を確保するきっかけをつかんだと、いえるのではないか。
 南沙諸島でのかなり強引な行動と、ASEAN外相会議での柔軟な態度の組み合わせで、中国は対東南アジア外交に大きな成果を収めたといえよう。 最近中国は急速な軍事力拡大に乗り出している。ロシアから最新鋭のスホイ27型戦闘爆撃機を導入しつつあるほか、ウクライナから新造空母を購入するとの情報も伝えられている。海軍の行動範囲拡大には極めて意欲的で、すでに西沙諸島の一部に基地を建設したとされる。アジアの軍事大国への道を着実に整えつつあるようだ。
 ASEAN諸国は、フィリピンのスビック海軍基地から年内に米軍が引き揚げることになっていることから、この地域に生じる軍事的空白に神経質になっている。マレーシアが南沙諸島の現実に合わせて、ロシアからミグ29型機を緊急購入するといわれるように、この地域には、軍備拡張に火がつきかねない危険があるのが気にかかる。
 欧州がすでに卒業したかに見える軍備拡張合戦を、アジアでこれから始める愚行を犯さぬよう、アジア人の知恵の深さが問われるところである。
 
 
 
 
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